阿部サダヲ、“思い出の歌舞伎町”で挑む新たな『ふくすけ』「過去に観た人は1回忘れて」
宮藤官九郎脚本による1月期放送のドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS系)で主演を務め、第119回ザテレビジョンドラマアカデミー賞主演男優賞、第50回放送文化基金賞演技賞に輝くなど、改めて人気とともに実力の高さを見せつけている俳優・阿部サダヲ。今度は阿部や宮藤も所属の「大人計画」を主宰する松尾スズキが手掛ける舞台『ふくすけ2024-歌舞伎町黙示録-』に立つ。『ふくすけ』には3度目の出演となる阿部。「最初はちょうど結婚したくらいの時で、その次は子どもがいました。今度はその子が成年になってるんです」と、自らの人生と照らし合わせてしみじみ語る阿部に話を聞いた。
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■リニューアルされた台本。好きなセリフは「言えません(笑)」
昭和のスパルタ教師(『不適切~』)から、献身的な妻サカエ(黒木華)に暴力的な愛を向ける警備員のコオロギへ。なんともパンチのある役が続く。1991年が初演の『ふくすけ』は、これで4度目の上演を数える松尾スズキ作・演出の代表作だ。薬剤被害によって障がいを持った少年“フクスケ”をめぐり、様々な境遇にある登場人物たちがもがき生きる姿を赤裸々に描き出す。コオロギはフクスケが保護されてきた病院の警備員。台本をリニューアルした今作では、コオロギと彼の盲目の妻サカエの夫婦を軸に物語が展開していく。
――これまではフクスケを演じていました。今回は松尾さんが過去に2度演じたコオロギ役です。
阿部:『ふくすけ』は長く求められている作品ですよね。時代とか年齢によっても受け止め方が変わってくる物語だと思うのですが、振り返ってみると、自分自身の変化も感じます。最初にフクスケを演じたときは、ちょうど自分が結婚したくらいの時で、次に上演したときには子どもがいました。今度はその子が成年になってるんです。成年になる子が生まれる前からやってる舞台……。すごいですよ。
――本当にそうですね。阿部さんは、以前からコオロギを演じたいと思っていたとか。
阿部:初演のときには僕は観客として観ていたんですけど、そのときではなくて、僕が演者として参加してフクスケをやった、1998年の2回目のときに「コオロギって面白いな。やってみたいな」と思いました。もちろんフクスケも良いんですけど、目の前で他の人の芝居を見ていると良いなと思いがちなのと、絶妙にこんな人いないよねっていう、ちょっと薄汚い感じの(笑)松尾さんの芝居の仕方もあって、「嫌な感じだな」っていうのが良かったんですよね。でもいざ自分でやってみると、また印象が変わって来るんです。
――というと。
阿部:役をもらうと、その役を好きにならないとできない、ということもありますが、今はコオロギに愛情を持ってやっています。この人にも理由があって、こういう言動になってるんだなというのが少し分かってきていて、見方が変わっている気がします。それに今回は台本も変わっていて、コオロギとサカエ夫妻のことがより分かるようになっていると思います。
――台本が変わったとのことですが、今の時点で好きなセリフがあれば教えてください。
阿部:それは言えません(笑)。まさに前とは変わった部分ですし、その場で受け取って欲しいので。ただコオロギは、意外と悲しい人、可哀そうな人だなと感じています。
――行方不明になった妻マス(秋山菜津子)を探し続けるエスダヒデイチ(荒川良々)の姿が、純愛と呼ばれるのに対して、コオロギのサカエへの愛は“歪んでいる”と言われがちです。
阿部:僕はコオロギも純愛なのかなと感じてますけどね。確かにちょっと曲がってますけど。今回、それが分かるセリフも増えている気がします。