「俳優ってそういうもの」 デビュー25周年の長澤まさみが語る境地と芝居へのブレない情熱
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――本作では人形の“アヤちゃん”も大事な共演者ですね。
長澤:アヤちゃんは、本当に表情が豊かになるように作られているんです。見る角度によって笑っているように見えたり、怒っているように見えたり、ちょっと悲しそうに見えたり。左右対称じゃないし、影が落ちるように作られているので、ほんと“お芝居”してくれるんです。共演者としてすごく頼りになりました。
――本編ではないがしろにされるシーンもありますが……。
長澤:そうなんですよ! あれもすごくかわいそうでした。あと、実はアヤちゃんを中心に、子どもたちの中で俳優としての結束力が生まれている感じがあったんです。
――アヤちゃんの影響で子役のみなさんに“結束力”が?
長澤:今回、(池村)碧彩さんや(本田)都々花さんも、じっとしていなきゃいけなかったり、結構大変なこともある現場でした。だけど、俳優ってそういうもの。それでも“大丈夫?”と聞いたら、ふたりとも“できます。もっとやりたいです”と言ってしっかりやってくれるんです。それが、アヤちゃんが頑張っている姿がいい影響を与えているのかなと感じたんですよね。人じゃなくても芝居が作られていく力というのがあるんだなと、面白かったです。それに本当に想像力やその場の感覚をすごく試される現場だったなと思います。
■俳優デビュー25周年! 「芝居への気持ちが揺れたり、苦しさを感じることはない」
――“俳優ってそういうもの”という言葉が出ました。長澤さんからは、お芝居に向ける揺るぎなさがすごく伝わってきます。しかし時には気持ちが揺らいだことなどはなかったのでしょうか。
長澤:私は今年でデビュー25周年になります。今回でいうと、碧彩さんや風吹ジュンさんもそうですが、この仕事って、違う世代が集まって一緒にひとつの作品を作るんです。私が『クロスファイア』(2000)という作品でこの世界に入ったときから同じ。世代を超えて、同志としてそこにいる。そういった環境にいたので、芝居への気持ちが揺れるとか、何か苦しさを感じるといったことはないんですよね。
――年齢を重ねることで生まれるプレッシャーはないですか。
長澤:同じように、年齢を重ねることで、苦しさやプレッシャーを感じることも、正直ないんです。もちろん芝居に対して自分が求めるものはその都度、変わってきます。目標や、今の自分や将来の自分と向き合うためには、必要な悩みもあります。そういった意味で苦しさを感じることはありますが、そこにフォーカスして生きてはいませんし、とにかく私は芝居に取り組むための姿勢に興味、関心がある。そして、そこを深めていきたいとずっと思っているんです。
――いまお話にあった“25周年”ということも、今年は改めて言われることが多いと思います。第50回菊田一夫演劇賞の授賞式があったばかりですが、その場には、特別賞受賞の大先輩、伊東四朗さん(87)も。
長澤:ご挨拶されていましたが、伊東四朗さんは芸歴66年ですよ。とんでもないことだなと。“すごいな、先輩”という思いがより強くなりました。受賞式には様々な世代の俳優さんもいらっしゃいました。そういう日なので、みなさまのスピーチを聞くことができて。それぞれの思いがあって、それぞれに芝居と向き合っているのを見ると、改めてとてもワクワクしますし、“俳優ってすごいなあ。いいなあ、かっこいいなあ”と純粋にうれしくなりました。
――ご自身の受賞の喜びはもちろん、そうした受賞式への参加は、折りに触れてみなさんの芝居への思いを感じられる場になりますね。
長澤:そうですね。それに“俳優ってすごいなあ”といううれしい思いは、共演者からも常に感じますし、観客のみなさんと同じように、私も俳優さんを見て感じています。いい舞台や映画、演技を見ると、私もみなさんと同じように感動するし、同じように心が動いて、自分も新しいアクションを踏み出したいなという思いになったりします。私もみなさんと同じように芝居を楽しんでいるんです。そうした感性を、これからもちゃんと自分で磨いていけたらと、いつも思っています。
(取材・文:望月ふみ 写真:上野留加)
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