山田裕貴、『ベートーヴェン捏造』は「音」の映画 2日間の声録りで感じた“選択肢を作る楽しさ”に迫る
――山田さんから見たシンドラーとはどういう人物ですか?
山田:やばい人ですよね(笑)。「これが愛なんだ」と言えば、正しいと思ってしまう人たちってたくさんいると思うんです。何かを守るために何かを攻撃して「いや、でもこれは守ってるから愛情だろう!」と自分を正当化して勘違いしてる人はいるけど、僕はそれは愛ではないと思っていて。なので(シンドラーの行動は)愛ではないと思います。きっとシンドラーに悪気はないんですけどね。でも、彼を知れば知るほど、「こうだ!」と思う考えに疑いの気持ちを持てる自分自身に安心感がありました。
――ある意味、共感できない?
山田:いや、共感できなくはないです。そういう自分もいたと思います。(シンドラーが生きた)環境や状況のなかで、ああなってしまうのは仕方ない。だけど、僕はそれを否定するというか、そういう生き方を僕はしないということですね。
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――シンドラーという役を、どういう風に落とし込んだのでしょう?
山田:ある意味、役を客観視できたので、のめり込むのではなく膨らましていきました。僕がシンドラーと同じ方向に突き進んでしまった場合、どういう表情になるんだろうとか、どういう心持ちになるんだろうということを考えました。ただ、シンドラーを本当の悪者にはしたくなくて、かわいげはあってほしいなと思っていて。そこは大事にしました。
――今作でのシンドラーは愛や尊敬が強まりすぎて、どんどんと予期せぬ行動をとってしまうという姿が印象的でした。山田さんは、そのような経験はありますか?
山田:ディズニーアニメーション映画の『ヘラクレス』が好きすぎて、パルテノン神殿を見にギリシャへ行きました。作品を30回は見ていると思うんですけど、毎回同じシーンで泣いちゃうんです。だから、どうしても本物を見たくて行ったんですけど、行ったら観光客が多すぎて、あれはアニメだからよかったんだな、ディズニーってやっぱりさすがだなと思いました。
――たしかに、それは予想外ですね。
山田:「その旅行は人生の分岐点になりました」みたいな話しができるような旅になるかなと思ったんですけど、肝心のパルテノン神殿は予想以上に観光客が多くて。結果、夢は夢のままで終わった方がいいっていうのは、ベートーヴェンも一緒だなと思いました!
(取材・文:於ありさ 写真:米玉利朋子[G.P. FLAG inc])
映画『ベートーヴェン捏造』は9月12日より全国公開。