グループからソロに――北山宏光&セントチヒロ・チッチ「境遇が似ている」と意気投合 極寒で壊れていく夫婦役を熱演
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――たしかにグループでの活動を経て、アーティスト、俳優として活動しているお二人は、歩んでいる道のりも近しいところがあるように感じます。ものづくりに向かう姿勢に共鳴する点や、刺激を受けることはありましたか。
加藤:曲作りのことや、お芝居にはどうやって向き合っているのかも教えていただきましたし、私はグループから一人になって不安な部分もあったので、そういうこともたくさん聞かせていただきました。
北山:チッチのライブも観に行かせてもらって、「これからどういったことをやり、何を作っていくんだろう」とワクワクしました。職業的に同じことをやっていても、アプローチの仕方や感性がいい意味でまったく違うので、すごく刺激をもらいます。
加藤:意気投合したのは、二人ともおいしい食べものが好きということですね(笑)。
北山:そう(笑)。いろいろなモチベーションになるのは、おいしいもの!
北山宏光
――グループから一人になる時の不安には、北山さんも共鳴できましたか。
北山:その時の僕には曲もなければ、仕事もない。何もない状態からのスタートでした。1年以上かけて丁寧に荷物を下ろしながら、20年くらいやり続けてきたことをゼロにして。そこから新たに始めるというのは大変なことでもありましたが、いろいろな縁がつながって今回もお話をいただくことができました。振り返ってみると、自分も強くなったのかなという気もしています。
――今、どのような充実感を味わっていますか。
北山:何かを作り出す時の楽しさ、辛さもあるけれど、すべてに血が通っている。自分の財産となるものが、増えていくのかなという気がしています。そして一人になったことで責任感も増したけれど、プロジェクトを動かすときのスピード感も速い。「こういうものがやりたい」という自分の感性と、実際に動き出して形にしていくスピード感。その距離は年々、近くなってきているように感じています。
加藤:その感覚、すごく分かります。今の私にはメンバーはいませんが、こういうことをやりたい、こういう曲が作りたいと思った時に、すぐに話せるチームがいます。またセルフプロデュースをしつつ、自分のやっていることを愛してくれるファンの方がいると思うと、自分を認めてもらえているんだという喜びもあります。今は、やりたいことがずっと湧き出てくるような感じがしています。
加藤千尋(セントチヒロ・チッチ)
――そうした歩みの先で、大好きなホラー映画に出演する機会に恵まれたというのは、とてもステキなことですね。
加藤:好きなものがあること。そしてそれを「好き」と言い続けて、よかったなと思っています。
■加藤千尋、“おじいさん”からもらった金言を励みに邁進
――劇中の一家は、逃げ場のない恐怖へと巻き込まれていきます。お二人にとって、緊張感や恐怖に立ち向かう上で大事にしている考え方があれば教えてください。
北山:過去にも極度の緊張を覚える瞬間はたくさんありましたが、極論を言えば、死ぬわけではないから大丈夫…というか。「何を失っても怖くないぞ」と自分に言い聞かせながら、「恐怖なんてぶっ壊してやる」という気持ちで前に出ていくこともありました。そもそも僕たちがやっていることは尊くて美しいけれど、同時にくだらないことでもある。そんなふうに一歩引いて物事をフラットに捉えたり、応援してくれている人たちのことを考えたりするようにしています。
加藤:私は自分との戦いを怖がってしまうタイプなので、絶対に一人では生きていかないと決めています。一人で考え込むと頭も固くなるので、絶対に誰かに弱音を吐きます。人に頼るってとても大事なことだと思っていて。信頼できる人に打ち明けることで強くなれたり、誰かがくれた言葉が糧になることもあるので、抱え込まないようにしています。
(左から)北山宏光&加藤千尋(セントチヒロ・チッチ)
――この時、とても支えられたなと感じる言葉はどのようなものでしょうか。
加藤:「グループから一人になるんだけれど、怖いんだよね」と同じカフェにいた70代くらいのおじいさんに話していたら、「大丈夫。あなたの二本足で立って、いつかイエスを見つけなさい」と言ってくれたことがあって。その言葉は、自分の中でずっと大事にしています。
北山:…70代くらいのおじいさんに!? どういう状況?
加藤:常連さんだったんです。
北山:なるほど、何度か話したことがある人なんだね。たしかにその言葉は、金言だね。僕は、錦織一清さんからかけてもらった言葉を、ずっと大事にしています。
若い頃に、舞台でアドリブをやって、それに対してお客さんが反応する…ということをやっていた時期があって。それを見た錦織さんが、「“今日の笑いを取る”ということはいいけれど、お客さんのチケットは初めての小遣いを握りしめて買ってくれたものかもしれないし、その日に向けて汗水垂らして働いて買ってくれたものかもしれない。そう考えると、まずは毎日ちゃんとクオリティの高いものを届けて、それをスタンダードにすることの方が正しくないか? リピーターももちろんだけど、その人たちだけのために芝居をするのではなく、その日しか観られない人、初めて観に来た人のために芝居をしよう」と言ってくださった。
舞台が何公演と続いたとしても同じ熱量で感動を届け、コンサートにしてもライブ感はもちろん大事だけれど、お客さんがどういう思いでチケットを握りしめて、ここに来ているのかをきちんと考えなければいけない。僕たちのやっている仕事は、応援してくれたり、観に来てくれる人たちがいて初めて成立するものなんだと、エンタメの真髄を教えていただきました。
(取材・文:成田おり枝 写真:山田健史)
映画『氷血』は、7月3日より全国公開。

