松岡充、アーティストとしての自身と共鳴したミュージカルに挑む「同じ感覚を持ったセリフたちがそこにあった」
――ネブラという人物をどのように演じたいと考えていますか?
松岡:すごく難しいんですよね、試されている感じがするので。ただ、今の段階では、あまり作り込みすぎたくないなと思っています。僕がネブラを演じるのではなく、僕の中からネブラを出していくというイメージです。じゃあ、具体的にどうするのかと言われると、そこで迷っていて。ネブラが劇中で写真を撮ってもらう期間3日間なんですよ。ネブラはその3日間で迷い、揺れ動いていますが、でもそこで答えを出していない。なので、僕もそうやって創っていくのがよいのではないかと考えています。いつまでも未完成で、1本1本が全く違う。そうしないと、嘘を作ってしまう気がします。
実は、短いものでしたが、韓国版の資料映像を観たときに、「これは作りすぎだろう」と思ったんですよ。僕よりも若い俳優さんが年老いたネブラを演じていましたが、70代のネブラを演じている姿が最初は嘘くさく見えたんです。でも、70代のネブラに違和感を持たせることさえも、演出だったのかもしれないとも思いました。それを証拠に、後半になるにつれて、違和感が薄れていくんですよね。もし、そこまで複雑に考え込まれて作られているのだとしたら、僕はやっぱりそれを超えていきたい。もちろん、比べるものではないけれども、そういう想いはありますね。そうやって、難しく考えすぎないとダメな作品なのだと思います。
――稽古中も考えて考えて、作っていくんですね。
松岡:はい、向き合って、突き詰めたいと思います。もちろん、考えなくてもできるとは思います。でも、そうしていかないと、ただ上演しただけの作品になる。それだと面白くないですよね。1万2800円というチケットを買って観にきてくださっている客席の皆さんに、その価値のあるものをお届けしないといけないという使命があると思っています。
――演出のシライ(ケイタ)さんとはすでにお会いしているそうですが、シライさんの印象を教えてください。
松岡:シライさんとは、オファーをいただいたときに、食事をしてお話をさせていただいたのが最初です。僕は、演出家の方と合わないことがあると、正直に伝えます。「僕はこう思いました」と全部ぶつけてしまうので。でも、シライさんは「僕もそうなんですよ」という感じだったので、それなら安心だなと(笑)。僕は、隠されて、都合のいいことや聞こえのいいことだけ言われるのが嫌なんです。どこかで綻びが出たときに、それは役者のせいになるし、もっと言ってしまえば、看板である主役のせいになる。それを全て背負うならば、全部を分かっていないと背負いきれないですから。なので、シライさんには、そうした心配がないという安心感がありました。キャストの皆さんも、「この人たちだったら、僕が背負う必要はない」という方たちばかりです。いろいろな道を通ってきて、痛みもきちんと感じて、それを克服してきた方たちなのでカンパニーとしても安心感があります。
――小劇場で6人編成という贅沢な生演奏も本作の見どころの一つです。ぜひ、音楽的な本作の見どころも聞かせてください。
松岡:僕は、30数年間、ライブを中心に音楽活動をしてきました。そうした中で、音楽の本当の魅力は、ダイナミックスさにあると思います。音は、空気の振動ですよね。その振動を生で、体全体で感じることができるのがライブなんです。なので、舞台でも絶対に生演奏の方がいいんですよ。ただ、すごくお金がかかる。だから、どうしても削られてしまうことが多いんです。それは、いち音楽家として、すごく損していると思っています。ただ、予算があってのことなので、いたしかたないこと。それを生の歌でカバーすることで創ってきた作品もある。でも今回は、生演奏なので、本当に安心できます。基本的に、ミュージシャンはその楽器に一生涯を賭けているわけですよね。例えば、ギタリストならギターに生涯を賭けているし、ベースならベースに生涯を賭けている。それって、人生の選択としては、なかなかコアです。だからこそ、そこで生きている方たちはただ者じゃない。そうでなければ、今、ここにいないと思います。そうした方たちの音楽というバックアップがあるだけでも、すごく価値が上がると思います。
――楽曲もすでに聞かれていますか?
松岡:少しずつ聞かせていただいています。楽曲は面白いです。趣がある。意外性のあるコード進行やメロディー展開がありますが、どこか親しみがあるんですよ。今日も車で聞いていて閃いたのですが、昭和初期の日本人が歌う欧米化された楽曲に近いのかもしれないと思いました。正しくは欧米化できてないんだと思います。ただ憧れて創ったものだから。でもそんな雰囲気が魅力的だったり。そうした懐かしさとちょっとしたオシャレな感じが混ざっている気がします。
――音楽面も楽しみです! 最後に読者に向けてメッセージをお願いします。
松岡:こうしたインタビューやプロモーションで作品の魅力を端的に伝えることがすごく難しい作品です。なので、「これは僕がやるべきだと心底思うほど、この作品にマッチした」ということをお伝えしたいと思ってお話させていただきました。演劇ファンはもちろんですが、声を大にして言いたいのは、SOPHIAのファンの人たちにも劇場に来てもらいたいです。これまで、ミュージカルや演劇、芝居をやっている松岡はいいやと思った方にもぜひ観てほしい作品です。この作品の中の僕を見てくれれば、僕が30数年かけてやってきた音楽活動での表現の根幹に通じるものがあると感じてもらえると思います。改めて、SOPHIAの歌詞を読み返したくなるんじゃないか。そして、懐古するだけでなく、新しい景色を観てもらえると思います。何か新しいものを探している方もぜひ観にきてください。驚くと思います。
ミュージカル『SHOWMAN~4番目の影武者~』は、9月1日から9月13日まで、新国立劇場 小劇場にて上演。
