邦題『災愛』に太鼓判! 『悪魔のいけにえ』新監督にも決定した26歳新鋭が語る、全米異例ヒットの要因
またひとつ、ホラー映画史に伝説が生まれた。新鋭カリー・バーカー監督の劇場長編デビュー作『オブセッション 災愛』は、製作費100万ドル未満の低予算作品ながら、全米公開後のオープニング3日間だけで1720万ドルの興行収入を達成。製作費の100倍を超える驚異のサプライズヒットとなった。勢いは止まらず、全世界での興行収入は4億ドルを突破。2026年に公開されたホラー映画として世界最高の興行成績を記録している(7月10日時点/Box Office Mojo調べ)。本作で日本初登場となるカリー・バーカー監督は26歳。11歳で映画を作り始め、YouTubeで発表したファウンドフッテージ・ホラー作品は再生回数200万回超を記録した。この実績を足がかりに、本作で全米に“災愛”旋風を巻き起こし、A24が製作する新作『悪魔のいけにえ』の監督にも決定。世界中のホラーファンから注目を浴びる彼に、現在の心境を聞いた。
【写真】ニッキーの表情の変化が怖すぎる! 『オブセッション 災愛』場面写真
本作の主人公は町の小さな楽器屋でバイトする青年のベア。優しく夢見がちで、いいヤツだが、不器用で意気地がない。バイト仲間のサラに好意を抱かれていると薄々知りつつ、職場の高嶺の花、ニッキーに叶わぬ恋心をこじらせ続けている。彼女の転職を機に告白を決意したベアは、プレゼント選びに立ち寄ったパワーストーン・ショップで「願いの柳」なる不思議グッズを入手。つい勢いでニッキーが自分を好きになるよう願う。すると事態は急転、彼女は恐ろしいほどベアに首ったけに。しかし、身勝手な理想の“カノジョ”をお仕着せされた“現実の彼女”は呪いのバグを起こし、制御不能な“災愛”の恋人へと変貌してゆく。
“災愛”を呼び込むことになる「願いの柳(ワン・ウィッシュ・ウィロー)」(C)2026 Focus Features LLC.
話題作『MICHAEL/マイケル』と『プラダを着た悪魔2』に次ぐ、全米初登場第3位を記録した本作は、SNSで口コミが拡散。公開2週目、3週目の興行収入が前週を上回る異例の事態となり、2週連続で前週の収益を上回るのは、『E.T.』以来、実に44年ぶりの快挙となった(※クリスマス公開映画を除く、ワイド公開作品として)。
■誰かに見せたくなる「衝撃」
――まず、本作『オブセッション 災愛』がアメリカで大成功を収めた理由をご自身で分析するとしたら?
カリー・バーカー監督(以下、バーカー監督):僕の映画作りの根底にあるのは、劇場で強烈なシーンに出くわす瞬間の「衝撃」だ。例えば、トッド・フィリップス監督の『ジョーカー』。あの生放送の銃撃シーンでは劇場内が騒然となった。僕は家に帰るなり、友達に連絡して「絶対に見なきゃダメだ!」と勧めまくった。「なんならもう一度、僕も一緒に観に行くからさ」って。あるいは『TALK TO ME トーク・トゥ・ミー』で幼い少年が頭を机に叩きつけるシーン。『透明人間』で妹の喉が切り裂かれる場面。『ミッドサマー』で崖から老人が身を投げる棄老の儀式も忘れられない。どれも友達に見せて、反応を確かめたくなる。『オブセッション 災愛』が成功した要因のひとつは、誰かと共有したくなる、そんな「衝撃」があったからじゃないかと考えているよ。
――本作は脳裏に突き刺さる「衝撃」が満載ですが、どこから映画の着想を得ましたか。実体験ってことはないですよね?
バーカー監督:実体験じゃないよ(笑)。でも、僕は「自分に語れないこと」はやらない。逆によくある設定でも、僕にしかできない変な方向に話を進めたい。今回は恋愛がいかに常軌を逸したものになり得るか、というアイデアから出発し、思いついた要素をスマホにメモして、徐々に肉付けした。相手に執着する恋愛関係は普遍的だけど、特に映画のベアとニッキーは互いに激しく執着(オブセッション)することになる。
衝撃行動の数々を見せるニッキー(C)2026 Focus Features LLC.
――若い頃は恋愛経験も少なく、悟りの境地にも遠いので、つい自分にとってハードルの高い高嶺の花を狙って失敗する。客観的に見れば、ベアは身の丈に合ったサラと一緒になればいいのに、と思ってしまいます。
バーカー監督:それは真理だね。友人関係のなかで特定の誰かに夢中になってしまうことはよくある。冷静になれば、自分にベストマッチな相手がすぐそばにいるのに、それが全く見えない。僕が描きたかったのは、人生における束の間の“恋の盲目”についての物語だった。シットコムドラマ『ママと恋に落ちるまで』の主人公テッドのように、すぐ目の前にあるものになかなか気づけない。本作のサラにも、そんなもどかしい役回りを担ってもらった。
――ベアとニッキーが見せるジェットコースターのような激しい執着からは目が離せません。次第に変化してゆく二人の関係性、互いに刺激し合う芝居を引き出す秘訣とは?
バーカー監督:ニッキーは常に予測不能でいて欲しかった。僕にとってのホラー要素はそこにあった。意図が読めず、何をするか分からない相手は本当に怖いからね。一方、ベアは徐々に本性が露呈する。序盤では共感できる人物だったのが、消極的な行動のせいでだんだん悪役に思えてくる。関係性の逆転を狙ったんだ。芝居で最も重要視したのはリアリティ。ホラー映画の芝居は様式美っぽいでしょう? 恐ろしい存在を目撃した人が、心を奪われたように目を見開いて立ち尽くす。普通ならパニックになって逃げ出すはずだよね。
