山崎賢人、俳優デビューから10年「何度も壁にぶち当たった」

俳優の山崎賢人が、又吉直樹の小説を映画化した『劇場』でどうしようもない“ダメ男”役にトライ。人生初の無精ひげを生やし、新境地を切り開いている。演じたのは、創作活動が思うようにいかず、恋人にもつらく当たってしまう劇作家の永田役。若手俳優のトップランナーとなった山崎だが、役者業に打ち込む中では「何度も壁にぶち当たってきた」と告白。「永田の表現者としての弱さに共感した」と胸の内を打ち明ける。壁にぶち当たり、見えてきた景色ーー。俳優デビューから10年。「正解がないからこそ、難しい。だからこそ、面白いと実感している」という役者業への熱い思いを語ってもらった。
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■「こういった恋愛映画は初めて」新境地への思い
又吉の同名恋愛小説を映画化した本作。友人と劇団を立ち上げた脚本家兼演出家を担う永田だが、その前衛的な作風は上演ごとに酷評され、今や解散状態。ある日、自分と同じスニーカーを履いている沙希(松岡茉優)と出会い、生涯忘れられない恋を経験していく。
ボサボサ頭に無精ひげといった、永田の“ダメ男”としてのビジュアルもインパクト大。「行定(勲)監督とは、『髪型もひげも、永田の自己主張の表現。“これが俺だ”というアイデンティティーのあらわれだ』という話をしました。行定監督とはたくさん話し合いをしましたが、『どういう終わり方をしてもいいから、永田として動いてみて』と、すごく自由にやらせてくれるんです。一緒に永田像をつくっていくという過程、すべてが楽しかった」とイメージを覆す役柄を演じきり、充実感もたっぷり。
(C)2020 「劇場」製作委員会
永田と沙希の不器用な恋は、ヒリヒリとした痛みをともなうものでもある。これまで数々のラブストーリーに出演してきた山崎だが、「こういった恋愛映画は初めて。自分にとっても挑戦的な作品でした」と新境地への思いを吐露する。
「実は、初めて台本を読ませていただいたときに、“恋愛映画だからやりたい”と思ったのではなくて、“永田を演じたい”と思ったんです。今思うと、そういう恋愛の方向に頭がいっていない感じって、ちょっと永田っぽいかもしれないですよね」と笑いつつ、「俳優も劇作家も表現者という意味では同じ。永田の表現者としての弱さにすごく共感ができた」という。
■俳優デビューから10年「何度も壁にぶち当たった」
同世代の劇団の成功に嫉妬し、自分の理想と現実とのギャップにもがく永田。一方の山崎は、2010年にドラマ『熱海の捜査官』で俳優デビューし、2016年には映画『ヒロイン失格』や『orange ‐オレンジ‐』の活躍で第39回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。“サヴァン症候群”の青年を演じたドラマ『グッド・ドクター』や、大ヒットコミックの実写映画化で主演を担った『キングダム』など次々と新たなチャレンジを重ねるなど、順風満帆とも思えるキャリアの持ち主だ。一体、永田のどんな面に共感したのだろうか。
すると「確かに僕は、これまであまり途切れることなく仕事をさせてもらっていますが、完璧だと思ったことも、これで満足だと思えたこともない。永田を見て『表現をしている人は、こういうことを考えているよな』と共感ができた」とストイックな姿勢を告白。「誰かと比べられてしまう仕事ということも同じ」だといい、他人の才能に嫉妬しそうになったときは、「いつでも、“俺は俺だ”と思うようにしている」と自身を鼓舞していると話す。
10年にわたる役者人生においては、「何度も壁にぶち当たった」とも。とりわけ悩みが深かったのは、『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』や『羊と鋼の森』の撮影に身を投じた時期だという。「『ジョジョ』は漫画原作があって、“スタンド”という能力を発動させるなど、どうやって実写映画として形づくっていいのかすごく悩んだんです。『羊と鋼の森』は調律師の役を演じさせていただいて、専門職に打ち込む人を演じたのも初めてでした。このときもどう表現したらいいのかと、かなり悩みましたね」。