17歳から10年――武井咲、結婚・出産を経ての『るろうに剣心』薫役「不安だった」
◆私の変化をどう受け取ってもらっているのか…
『The Final』のクランクインは2018年の11月。その年、武井には個人として大きな変化があった。前年に結婚した武井は、第1子出産を経ての撮影であり、本作の公開が、女優としての映画復帰作。クランクイン前の大友監督との久々の再会は、正直、「不安だった」と告白した。
「大友監督に、私の変化をどう受け取ってもらっているのだろう。私がどう見えているだろうと。でもお会いしたとき、監督はすごく温かな声で『おめでとう!』と言ってくれて、娘が生まれたことも喜んでくれました」と、心からホッとしたといった様子をにじませる武井。
本作で薫は、これまで自分が全く窺(うかが)い知ることのなかった剣心の過去を知るのだが、監督からは、「お芝居することの重みは、いろんなことを経験してこそ出るものがある」と声をかけられた。「すごくうれしくて。とても衝撃的な出来事に直面する薫を、今の私が演じるからこそ、監督は『重みのある成長した薫を見せられるんじゃないかと思っている』と。すごく心強い言葉でしたし、そこから、とてもフラットに、自分が素直に感じたように演じて大丈夫なんだと思えるようになりました」と、その言葉がとても大きかったと述懐した。
そんな監督の期待に、武井は応えた。当時と変わらぬ若々しさを伴って登場した薫は、後半、剣心を包み込むような「母性」を感じさせるようになる。武井本人は自分自身から出る「母性」については考えたことがなかったと言うが、それでも「自分より大切な存在がいる。それは自分の中での大きな変化なのかもしれません」と今の自分を見つめる。『The Final』には、この10年が武井個人にとっても大きなものだったからこそ、生み出せた薫が、確実にいる。