『全裸監督』ヒロイン・恒松祐里に聞く、ラブシーンへの葛藤と決意の理由
2019年にNetflixにて配信されると、全世界に大きな衝撃を与えた『全裸監督』。アダルトビデオ業界に革命を起こした村西とおるを演じた山田孝之と、村西のミューズとなる女優・黒木香にふんした森田望智の2人の演技は絶賛された。そんな中、続編となる『全裸監督 シーズン2』で、ヒロイン・乃木真梨子を演じたのが新進の若手女優・恒松祐里だ。7歳の時から子役として活動し、現在放送中のNHK連続テレビ小説『おかえりモネ』(NHK総合/毎週月〜土曜8時)への出演のほか、映画やドラマなどで幅広い役柄を演じる実力派が、過激な描写もある本作に出演しようと思った決め手とは何だったのだろうか――恒松の胸の内に迫る。
【写真】『全裸監督 シーズン2』ラブシーンに臨むヒロイン・恒松祐里の場面写真&撮り下ろしカット(12枚)
■脱ぐことには抵抗はなかったが、すごく悩んだ
成功を収めた前シリーズの続編で、新たなヒロインとして作品に参加すること、さらにはアダルトビデオ業界を舞台に、過激な性描写もいとわない作風と、オファーを受けるには、並大抵でない覚悟が必要なことは、容易に想像できる。実際、恒松自身も出演の話を受けたときは「すごく悩んだ」という。
「一番『どうしようかな』とためらったのはラブシーンがあるという部分です。私自身、脱ぐことに関しては、あまり抵抗はなかったのですが、いつか自分が結婚して、子どもが生まれたとき、今回の作品に出演することが、どんな影響を与えるのか…ということは考えてしまいました。もしかしたら子どもが小学生くらいになったとき、お母さんがこういう作品に出ていたからといじめられたりしてしまうかも…。そんな未来を考えると、すごく悩んでしまったんです」。
実は、過去にもいわゆる“濡れ場”を想像させる作品へのオファーはあったという恒松。その都度、両親に相談をしていたというが、映画を芸術として捉えている両親は、いつも「いいと思う。賛成だよ」と理解を示してくれていた。
「タイミングが合わず、過去の作品には参加することはなかったのですが、今回も同じように親に相談すると『いい作品だし、やってみたら』と背中を押してくれたんです」。
もう一つ、恒松の心を大きく動かしたのが乃木真梨子という役柄への興味と、『全裸監督』という作品の大きさ。
「台本を読んだとき、乃木は愛を体現する役柄だなと思ったんです。自分の中にもそういう要素があるのかなと少し感じていたのですが、今までそういう表現をしたことがなかったので、やってみたいと素直に思いました。あとは純粋に作品の規模にも惹(ひ)かれました。前作は社会現象にもなったぐらいで、そんな中でヒロインを演じられるというのは、とても大きなチャンスだし、特にコロナ禍で先に何が起こるか分からない中、『この機会を絶対に逃したくない』と思ったんです」。
■ラブシーンはアクションみたい
Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督 シーズン2』より
一人の観客として作品を楽しんでいた前作。その現場にヒロインとして参加することになった恒松。当然、黒木香役の森田の芝居は意識していた。
「やっぱり森田さんの存在というのは、女優の恒松祐里としても、結構大きかったんです。演じているときは『本当に森田さん演じる黒木を超えられるのか、黒木香のようになれるのか』という葛藤はずっと持っていました。でもこうした感覚って劇中の黒木と乃木の関係性にも似ていて、その意味では、こうした感情ってよりリアルなお芝居に生かせるのかなと思ったんです」。
撮影前、ラブシーンについて「不安があった」と話していた恒松。どんな思いで撮影に臨んだのだろうか。
「もともとオーディションなどでもあまり緊張するタイプではないのですが、今回もまったく緊張しませんでした(笑)。もちろん撮影が始まる前は、多少ナーバスになる部分もありましたが、とにかくラブシーンって、体の使い方や顔の表情、声の出し方など、確認しなければいけないことが多すぎて、アクションを撮っているみたい(笑)。アクションなら撮影の前からしっかり練習できますが、センシティブなシーンだと、あまり段取りを繰り返すこともなくすぐ本番になるので、余計大変でした」。