『DUNE/デューン』ドゥニ・ヴィルヌーヴが語る、巨匠ハンス・ジマーが作った“異星の音”
●『スター・ウォーズ』にも影響を与えた「ボイス」の表現方法
フランク・ハーバートによる原作小説は、『スター・ウォーズ』や『アバター』シリーズなど、数多くのSF作品群に影響を与えてきたことでも知られる。例えば、謎の女性集団「ベネ・ゲセリット」が使う、言葉を武器にして相手の意思をコントロールする「ボイス」という特異能力は、『スター・ウォーズ』の「フォース」を思わせる。
映画『DUNE/デューン 砂の惑星』 (C)2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
ヴィルヌーヴ監督はこのボイスを表現するにあたり、ある考えから音の発想を得たという。
「僕は、人間は遺伝子など先祖から受け継いできたものが常に意識化にあり、日常で何かを選択する時には、そうした内なる力が作用しているんじゃないか、という考え方にとても興味があるんです。映画の中では、『ベネ・ゲセリット』のシスターたちが、自分たちの内なる力を『ボイス(声)』という形で発揮することができるんですが、この力強いボイスの音を作るにあたり、先祖の女性の声が口からパワフルな形で出てくるようなイメージを考えました。ただし視覚的なトリックに一切頼らず、音だけで表現したかったんです」。
ひとたびボイスを受けた側は、まるで意識を失ったかのように言われるがまま行動し、精神すら抑圧されてしまう。そんな強力なパワーを持つ“音”の表現にも注目だ。
●胸躍るメカやガジェットが多数登場 監督のお気に入りは?
映像、音響とすべてをこだわり抜いた本作だが、ヴィルヌーヴ監督は芸術性だけではなく、娯楽性も意識して本作を手掛けた。
「本作では宗教と政治が絡むことの危険性や、母と息子の関係性など、シリアスなテーマを扱っていますが、とてもヒューマンな物語でもあります。悲劇でもあるので、ダークな部分を中心に描かれますが、同時に娯楽性にあふれた作品でもあります。すごく感銘を受けるようなクリーチャーや、見たことがない新しいテクノロジーが登場しますが、いずれもハーバートが原作のなかで作り上げたもので、僕はそれをできるだけ忠実に表現しようとしました」。
映画『DUNE/デューン 砂の惑星』 (C)2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
確かにSFファンが喜びそうなメカやガジェットが多数登場する本作。ヴィルヌーヴ監督のお気に入りは、鳥やコウモリ、昆虫のように翼を羽ばたかせて飛ぶ航空機「オーニソプター」と、虫のように小さい暗殺兵器「ハンターシーカー」だそう。ぜひ登場シーンを、楽しみにしていただきたい。
最後に、これまで手掛けてきたSF映画との違いについて、監督はこう語った。
「今までの自分の作品は、R指定の作品が多かったです。内容の怖さや、暴力表現があり、どちらかといえば大人向けの作品でした。でも僕が『DUNE』の小説と出会って夢中になったのは、13~14歳くらいの時期です。だから映画を通して、その魅力を発見してもらいたいという気持ちが強かったので、今回は若い方にも見てもらえるようなエンタメ作品にしようとしました」と聞いて大いに納得。
まさに本世紀のエポックメイキングな1作となるであろう『DUNE/デューン 砂の惑星』は、幅広い世代の人々に衝撃と感動を与えるに違いない。(取材・文:山崎伸子)
映画『DUNE/デューン 砂の惑星』は公開中。