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木村多江、“薄幸系”から“怪演女優”へ 「面白い俳優になりたい一心で突き進んできた」

映画

◆50歳を迎えて「もう一度生き直してもいいのかな」

 今や出演作の途切れない売れっ子女優となった木村だが、「27歳くらいまではアルバイトをしながら役者をやっていた」と告白。「有名になりたいというタイプではなく、“面白い役者になるためにはどうしたらいいだろう”ということばかり考えていました。面白いというのは、意外性や驚きを与えられるような役者。観ていただく方の心に何か引っかかるようなお芝居ができたらと思っていました」と語る。


 役者としての転機は、子どもの死を乗り越えていこうとする夫婦を描いた映画『ぐるりのこと』(2008年)だった。「それまでは、自分を出すのがすごく嫌だったんです。鎧(よろい)を着てお芝居をしているようで、本当に自分が抱えている痛みは隠していたかった。でも『ぐるりのこと』で、心の中でふたをしていたものをたくさん開けることになって。役者の本質が見えることで、観客の方の心にも触れるものがあるんだと感じることができました」と実感を込め、「それからは、もっと木村多江がダダ漏れてもいいのかなと思うようになりました」と楽しそうにほほ笑む。

 「改めてなぜこのお仕事が好きなんだろうと思うと、化学反応を起こすことが最高に楽しいんです。『あな番』も『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』も、化学反応ばかり起きるような現場。『阿佐ヶ谷姉妹』では安藤玉恵さんもそうですが、宇崎竜童さんや研ナオコさんもどういう球を投げてくるか分からない(笑)。台本に書かれたことが立体的になっていく過程がたまらなく面白い」と充実感もたっぷり。


 今年の3月には、50歳を迎えた。このことは木村にとって大きな意味を持つという。「父が49歳で亡くなっているので、“私は49歳を越えられるのだろうか”と思いながら生きてきたようなところがあって。逆に言えば49歳で死んでもいいと思えるくらい、ボロボロになろうが走り続けていこうと思っていました。だからこそ50歳を迎えたときに、また0歳になったような感覚になって。もう一度生き直してもいいのかなという気持ちになっています」と胸の内を明かす。「50代は今までと同じような速度で走ることはできないかもしれない。でも社会や誰かのために役立てるようなお仕事をしていきたいと思っています。役者というお仕事を通して、みなさんの心を支えられるような作品、勇気を与えられるような作品。私はどう見られたって構わないから、楽しく笑ってもらえるような作品に携われたらとてもうれしいです」と心を込めていた。(取材・文:成田おり枝 写真:高野広美)

 映画『あなたの番です 劇場版』は全国公開中。

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