『あの夏のルカ』に学ぶ“良い友情関係を築く方法” 心理学者が解説
8月1日に映画『インサイド・ヘッド』の続編『インサイド・ヘッド2』が公開されることを記念し、劇場未公開だった『あの夏のルカ』が29日から公開。本作で描かれるのは、イタリアの美しい港町ポルトロッソを舞台に、海の世界に住むシー・モンスターの少年ルカとその親友アルベルトのかけがえのない友情の物語だ。春は出会いの季節。劇中で描かれる二人のように、どうしたら“かけがえのない親友”になれるのだろうか? 法政大学文学部心理学科の渡辺弥生教授が、『あの夏のルカ』から学べる“友情関係の築き方”を解説した。
【写真】二人の友情がステキ! 『あの夏のルカ』ルカ&アルベルト
本作は、<海の世界>で暮らすシー・モンスターの少年ルカが、未知なる世界への好奇心を抑えられず<人間の世界>を知る親友のアルベルトと共に海の世界を飛び出し、憧れの人間の世界で新たな夢を見つけ、“ひと夏の奇跡”を巻き起こすというストーリー。
誰もが経験したことのある大切な親友との出会いを描いた本作だが、春になると、環境が変わることで仲良しの友達と離れ離れになってしまうことや新たな環境で友達ができるか不安に思っている人も多いだろう。渡辺教授は本作で描かれるルカとアルベルトのように友達と良い関係を築く上で、誰もが直面する葛藤について、“ヤマアラシのジレンマ”という心理をあげる。
ヤマアラシは全身が針に覆われた生き物だが、「お互い大好きでハグし合おうとすると、互いの針で刺し合って近づけないという葛藤が生まれるんです。相手を思って近づきすぎると束縛して心を傷つけてしまうこともあるし、離れすぎると親密でなくなってしまう。もどかしく葛藤します。そこを乗り越えられるかどうかは、自分と相手は違う人間だと気付き、相手のことが好きだからこそ互いに自立できる関係を築くことが大切だ、と気付けるかなんです」と“ちょうど良い距離を保つ”ことの大切さを語る。
本作で描かれるルカとアルベルトのように、同じ夢を持ち、協力し合う親友同士であろうとするがゆえに、互いにトゲを刺しあってケンカしてしまうことは誰にでもあるだろう。二人のように大きなケンカをしても親友でいられる方法について、渡辺教授は「彼らの年齢でほどよい距離に気付くのは難しい」としつつ、「ケンカしてしまったのは、相手が嫌いなのではなく、友達が大切で一緒にいたいと思っているからだという原点に気付くかどうかが大事なんです。そのことに気付ければ、自分の中の葛藤する気持ちが治まってくるんです。どうすれば互いに尊重し仲良く一緒にいられるのか考えようとします。そうやって葛藤するからこそ、互いの気持ちも共感でき、より深い友情に繋がっていきます」と解説した。
本作の中でルカとアルベルトも葛藤してぶつかり合ってしまうが、ピンチの時には自分のことを投げうってでも相手を助けたり、自分の素直な思いを伝えたりする中で、相手を大切に思う気持ちにお互いが気付き、二人の間にはより強い絆が生まれた。そんな友達を思う気持ちが詰まった本作は、あなたにとっても大切な友情の素晴らしさを改めて教えてくれるに違いない。
映画『あの夏のルカ』は3月29日より全国劇場公開。『インサイド・ヘッド2』は8月1日より全国劇場公開。