『下町ロケット』 クライマックスをより楽しむキーワードは“対決”

無人トラクターの開発を巡り企業間のし烈な戦いが始まった阿部寛主演のドラマ『下町ロケット』(TBS系/毎週日曜21時)。これまでの池井戸ドラマの魅力を踏襲しながらも、各キャラクターや会社同士の“対決”を重層的に描くことで、クライマックスへ向けてさらに盛り上がるストーリーを展開している。
【写真】『下町ロケット』第8話場面写真
第8話。重田(古舘伊知郎)や伊丹(尾上菊之助)らが手がけた無人トラクター「ダーウィン」が紹介され、話題をさらっていく中、追い打ちをかけるように、週刊誌に的場(神田正輝)の暴露記事が掲載されてしまう。後のなくなった的場は、無人農業ロボット「アルファ1」の開発を急がせ、大規模な農業イベントである「アグリジャパン」への出場を決めた。イベントでは佃(阿部)たちが見守る中、「ダーウィン」と「アルファ1」の無人農業ロボット対決が行われる…。
第8話では、帝国重工のアルファ1と、ダイダロスのダーウィンが性能を競い合う対決が描かれた。池井戸作品ではたびたび“企業間の対立と戦い”がモチーフとなるが、『下町ロケット』では、さまざまな“対決の構図”が描き込まれている。帝国重工とダイダロスの対決以外にも、「ゴースト編」での蜜月から一転した佃製作所とギアゴースト、そんなギアゴーストに在籍していた島津(イモトアヤコ)と社長の伊丹も対立関係に転じた。
一方、帝国重工に目を向けてみると、現社長の藤間(杉良太郎)と、次期社長の座を虎視眈々(こしたんたん)と狙う的場の関係や、財前(吉川)と彼を冷遇する的場の関係はこれまで何度も描かれてきた。さらに第8話では、帝国重工がロケットのバルブシステムの内製化を目指すという方針から、帝国重工でバルブ開発を担当している佃の一人娘・利菜(土屋太鳳)と、これまでバルブを供給してきた佃がライバル関係になるという展開に。
群像劇ならではのキャラクターの多さと、パート2という強みを活かし、重層的な対決構造を描いている本作。クライマックスに向けてさらなる波乱が予想されるドラマを、各キャラクターの“対決”に注目しながら見ると、より楽しむことができるだろう。(文:スズキヒロシ)