クランクイン!

ゆうめい・池田亮×東京にこにこちゃん・萩田頌豊与、「初めまして」の貴重対談で意外な共通点を発見

演劇

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池田亮

萩田頌豊与

東京にこにこちゃん

■嘘だらけの父の人生に、嘘というフィクションを重ねて

池田:僕からも聞きたいんですけど、にこにこちゃんでは、ドラマを描いている中でもスパーン! とギャグやボケで飛ばしたりするじゃないですか。そのバランスというか、上手さみたいなものはどうやって出しているんですか?

萩田:僕、全然ちゃんと向き合ってないんですよ。新作も、父親の嘘を巡る物語なわけですが、おそらく、池田さんだったら、最初から最後までお父様と向き合って作られる、と思うんです。それこそ、実際にお父さんも出演されたりとかもありますし。でも、僕は向き合えない恥ずかしさを「笑い」でごまかしてきた節があるので、今回はいよいよ向き合わなきゃなって思っています。

池田:なるほど。萩田さんにとって、かなり重要な作品になりそうですね。

萩田:あと、うちの場合は父が死んでしまってるので、嘘の理由とか、本当のところは聞けないし、分からない。どうしても行き止まりがあるんですよね。だから、話を聞いたり、そこと向き合うことができることは本当にすばらしいとも思います。もちろん、それが故の難しさや厳しさ、葛藤があると思うんですけど。

池田:どんな嘘だったのか、気になりますね。

萩田:僕は父が60歳の時の子で、「母さんのことが一途にずっと好きだった」って教えられて育ったんですけど、普通にバツ5で、葬式で知らない姉や兄がいっぱいいたんです。あと、「俺は深作欣二っていう名前で『バトル・ロワイアル』って映画を撮ったんだ」とも言っていました。

池田:やばい! それは、かなりすごいですね。

萩田:『ピカソぶっ飛ばせなくて、ごめん』っていうタイトルは、父親が死ぬ間際に書いていた小説からとったんですよ。病死だったんですけど、晩年はいろいろおかしくなっちゃって、「ピカソ殺す!」って言い出したりして。もうとっくに死んでるのに! で、その後結局死んじゃって、遺体を見つけたのも僕なんですけど、その枕元に『ピカソをぶっ飛ばせ』って書きかけの小説が置いてあったんです。あの時は分からなかったんですけど、「なるほど、父は文学でぶっ飛ばそうとしてたんだ」と思って、ピカソぶっ飛ばすくらいはしてやろうかな、って思って。

池田:なるほど。たしかに後々気づくことってありますよね。僕も『姿』を書いた時に、母の生い立ちや昔の話を改めて聞いたんですけど、息子としてではなく、1人の大人、そして作家としての立場から聞いたら、同情じゃないですけど、「母はあの時そうするしかなかったんだな」ってことが見えてきたりしたんですよね。子どもの頃は嫌だったことや分からなかったことも、1人の人間として俯瞰して、親子としての過去を乖離して聞けるようになって初めて共感ができたり…。そういうこともありました。

萩田:僕は父の60歳以降の人生しか知らないから、それ以前の人生を描くとなったら、もうそれは僕自身も嘘をつくしかないんですよね。だから、言ってみれば、父親の嘘の人生を、息子の僕がまた別の嘘の物語で塗り固めるんです。でも、そうした時に何が残るのか、見えるのか。そういう、一生答えなんかないものを、どこまでも壊しながら探すような作品になる気はするんですよ。

池田:お父様がどう思うのか、本当のところは分からないですけど、少し遠い立場からの気持ちとしては、喜ばれるんじゃないかな、っていう気もします。生前に小説とかも書いておられたわけですし。めちゃくちゃな嘘をついてきた自分の人生に対して、息子がフィクションという嘘で応答する、じゃないですけど…。

萩田:そうですよね。そこが難しいですよね。池田さんも『ハートランド』で描いていらっしゃいましたけど、「喜んでくれたらな」とか思っちゃうのも、僕たち作家のエゴだったりもするじゃないですか。そう思わざるを得ない部分というか…。だからこそ、もう作るしかない、と思っているんです。笑いとハッピーエンドという自分のカラーで。今回も類に漏れずクライマックスでもボケ倒したいと思います!

池田:ゆうめいと東京にこにこちゃんの違いにはコントと芝居の違いというか、そういう境界線があるのかもしれませんね。ゆうめいはベースが芝居だからクライマックスで笑いには振り切れない部分があって、でも、にこにこちゃんはベースがコントだから行ききれるんじゃないかなって。

萩田:90分かけて積み上げたシリアスをたった1個のボケで崩すって、それこそ誰もやらないじゃないですか。だって基本的にはやんない方がいいから。でも、それでしか到達できないラストの快感があるんですよね。お客さんが「何だよ、感動しそうだったのに」って思ったら、それはもう演劇が感動に向かっている証拠だと思うんです。でも、確かにこの茶化しは、他のシーンでも散々ボケてきたからやれることで、にこにこちゃんでは感動に向かうギミックとして使いがちですけど、ゆうめいでやったら、役者さんはたまったもんじゃないですね(笑)。

萩田頌豊与
池田:でも、僕は、そこが萩田さんの優しさだと思うんです。とにかくあらん限りのギャグを重ねるじゃないですか。だから、ラストでもそれができるし、かつ感動もできる土壌や人物造形が敷かれていると思うんですよ。あと、どうしようもないシリアスな瞬間にふざけたくなったり、笑ってしまいそうになることやツッコミを入れたくなる時って実際あるじゃないですか。

萩田:葬式とかね。それこそ父が死んだ時とかもそうでした。あ、こういう時にも笑いが勝つんだ、って思いましたね。

池田:大体はそこで笑えないし、逆にツッコミを入れてとんでもない空気になったりした経験があるというか、そういう自分を持っていると、にこにこちゃんのクライマックスの茶化しはすごい勇気だとも思うんです。しかも成立させているわけだから。本当に笑えない人や笑えないことと向き合った時にどう笑えるか。僕たちはそこに向き合うべきなんじゃないか、って思ったりしますよね。「あなたは笑えるかもしれないけど、私は笑えない」って線を引かれた時に自分は負けたと思うんです。それを、負けじゃなくするためにどうやって立ち向かおうかっていうのが、今自分の中でめちゃくちゃ課題なんですよね。

萩田:僕は100人いたら、100人笑わせなきゃって思っているし、全ての人に救いならぬ笑いの手を差し伸べはするけど、同じく難しいことだとも痛感しますね。一緒に向き合いたいですね。

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■岸田國士戯曲賞受賞 その時、池田は?!

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【公演概要】

ゆうめい『あわせて』
ゆうめい『あわせて』公演ビジュアル

ゆうめい 音楽劇『あわせて』

◆作・演出・美術:池田亮

◆出演:宮崎吐夢
    村山新

◆音楽:小西力矢

◆映像:りょこ

◆日程・会場
7月24日~26日/東京・ユーロライブ

8月28日・29日/岐阜・こどものほんや ピースランド

9月22日~24日/兵庫・旧奈佐小学校・弁天社(野外公演)
※豊岡演劇祭2026 公式プログラム

【公式サイト】https://www.yu-mei.com/awasete
【公式X】@y__u__m__e__i
【公式Instagram】@y__u__m__e__i
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