「演劇は流行ってない」って、どこの話? MICHInoX・武者匠×コトリ会議・山本正典&大石丈太郎×冷蔵庫ポルカ・荒川颯音が地域演劇を語る
――今日は開幕より一足先にみなさんにこうして3地域からお集まりいただいていますが、これを機に互いに聞いてみたいこと、伝えたいことなどはありますか?
武者:今の荒川さんのお話にはすごく共感しました。私は28歳の時に仕事を辞めて演劇を始めたのですが、これまでの活動の中で「若い時期から演劇を始めていたらどうだったんだろう」とか「東京に住んだらどうなったんだろう」みたいなことを考えた瞬間もやっぱりあったんですよね。でも、「芝居を磨いて俳優として活躍するぞ」という軸と「ちゃんと長く演劇を続けていくぞ」という軸の2軸があった時に、焦らず長く続けていくことをより考えなきゃいけないとも思って……。そんな中で、仙台で精力的に活動していた劇団のみんなと出会えてこうして演劇を続けている。そういうことを改めて思い出させてくれるお話でした。
山本:僕も福井県の福祉バスが朝夕1本ずつ来るぐらいのところで生まれたので、荒川さんの感覚すごくわかります。だから、それこそ稽古前とかに吉祥寺の街を歩いていても、目的に向かってのみ進む人たちの凄さに圧倒されるんですよ。みんな、歩くこと、進むことに迷いがないというか……。ただ、僕にとってはここで暮らすのは2週間が限界と思ったりもして(笑)。そういう、東京と東京じゃないところに住んでいる人の体感差や視点の違いみたいなものが「ラブ・演劇博」にどう影響するのかは分からないのですが、そこはかとない空気として含まれるような気はしますよね。
武者:メンバーのほとんどは仙台の中心部に住んでいたり、東京と2拠点で暮らしていたりするのですが、私だけすごく田舎に住んでて……。でも、そうしたそれぞれの暮らしを通じて得る実感のようなものは芝居にもにじみ出るような気がしますよね。
荒川:そうですよね。私たちも色々な土地に住んでいるので、1つの土地で演劇をしているっていうアプローチとはまた違った関わり方で町と自分の関係性を模索している気がします。あと、クリエーション面で言うと、冷蔵庫ポルカは基本的にリモートで稽古をしていて、体をフルに使うことができないので音とモノローグに焦点を当てて作品を紡いでいくことに注力をしているんですよね。全員俳優が本業ではなく、つまり、年1回招集をかけないと演劇をやらない人たちの集まりなんですけど、でも、なんでやるかってやっぱり楽しいからなんですよ。そういう演劇の自由さも感じてもらえたらなと思います。
――最後に、地域を拠点に活動する団体としての展望、現在の演劇シーンに思うところがあればお聞かせください。
荒川:私は今、自分と自分の演劇を育ててくれた地域との関わりを模索しながら東京で創作をして生きています。それだけに、一時期タイムラインを賑わせていた「演劇流行っている/いない」の言説については、正直なところ「本当にしょうもないな」と思っていて……。そもそも議論自体が東京の演劇の話でしかないというか……。
山本:うんうん。
武者:そうですよね。
荒川:私を育んでくれた盛岡はとても演劇が盛んだし、市民参加型演劇も盛り上がっていて、演劇自体が日常に溶け込んでいるような地域で。もはや風土としてそういうものになっている。だから、流行どうこうの軸で語れるものじゃなく、絶えずそこに在るものなんです。自分を育んでくれた劇作家や演出家、演劇の原体験は盛岡のそうした風土の中にあるし、そうした背景が各地域にあると思うんですよね。なので、そこが透明化して語られる演劇の話は本当にしゃらくせえな、と。だからこそ、今回は東京の吉祥寺シアターで、自分を育んでくれたルーツやその演劇や人たちがちゃんと存在しているんだぞ、ということを上演を介して伝えられたらと思います。
山本:僕も荒川さんの意見に同意です。一方で、そうした言説や議論にとらわれずに自分たちの在り方で演劇活動をしている人は日本各地にいっぱいいますし、吉祥寺シアターさんの取り組みも然り、そういう声が少しずつでも上がってきているのはすごくいいなって思いました。今日、みなさんの声を聞けて本当によかったと思っています!
荒川:若くて地方から上京して劇団をやっていると、どうしてか下克上的文脈で捉えられることが結構多いんですけど、そんなハングリーな気持ちは1ミリもなくて(笑)。武者さんも仰っていましたが、私たちの目標もまさに「長く続けること」なんですよ。それこそ、老後とかに生存確認コミュニティとして機能するような。そこをゴールに演劇を続けていきたいと思っています!
大石:その発想、すごくいいですね。自分たちの若い頃って、そういうことを目的設定にはなかなかできなかったというか、それこそ「売れてやる!」という目的で始める人が多かったのですが、各々自由な目的で演劇を始める人たちがフィーチャーされてきているんじゃないかなと思って、聞けてよかったです。さっき、気づいたんですが、この3団体って、多分世代がちょうど干支一回りずつくらい違うんですよ。そのバリエーションも面白いですよね。この鼎談で上演のモチベーションがますます上がりました!
武者:地域の団体として背負えるところは背負いつつ、この機会を楽しみたいですね。応援して支えていただいている方々も日本各地にいるので、そういった人たちに胸を張れるようこれからも頑張っていきたいと思います。では、みなさん次は吉祥寺シアターで再会しましょう!
(取材・文:丘田ミイ子)
「ラブ・演劇博 -こちらの演劇、とおくのまちから。-」は、10月23日~25日に東京・吉祥寺シアターにて開催。
【公演概要】
「ラブ・演劇博 -こちらの演劇、とおくのまちから。-」
10月23日~25日 東京・吉祥寺シアター
■ラインナップ
MICHInoX『劇場版 宇宙蟹工船カルキノス FINAL MISSION 〜愛の底引き網を止めないで〜』
コトリ会議『スーパードヴァ』
冷蔵庫ポルカ『どこにでもいきてどこにでもいる』