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貴城けい&田野聖子が前半と後半で役を交換 舞台『マリア・シュトゥアルト』稽古場レポ

演劇

舞台『マリア・シュトゥアルト』稽古場の様子
舞台『マリア・シュトゥアルト』稽古場の様子(C)角田勇太

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 貴城けいと田野聖子がダブル主演し、IMAホールにて10月28日開幕する舞台『マリア・シュトゥアルト』の稽古場リポートが到着した。

【写真】舞台『マリア・シュトゥアルト』稽古場の様子

 スコットランドの元女王マリア・ステュアートと、イングランドの女王エリザベス1世。史実では一度も会うことのなかった二人の女王を、シラーは戯曲の中で対面させた。

 本公演最大の挑戦は、二人の女優による「役の交換」。前半、貴城けいは処刑を待つとらわれの女王マリア・シュトゥアルトを、田野聖子は玉座に君臨するエリザベス一世を生きる。 だが、史実には存在しなかった二人の女王の「対面」を境に、舞台は反転する。後半、貴城は王冠の孤独を抱えるエリザベスを、田野は死へと歩むことで自由を得るマリアを演じ直す。勝者と敗者、権力と信仰、ひとつの運命の表と裏を、二人がその身体で入れ替わりながら照らし出す。

 それぞれの女王を導き、操り、時に観客をも巻き込む語り手には、豊原功補・堀部圭亮(ダブルキャスト)。 道化役として舟木健がそこに交わる。

 この日の稽古は、堀部圭亮が出演する回。 幕が開くと、まず観客の前に立つのは「語り手」—そして彼はこの作品の「演出家」でもある。堀部演じる演出家が、客席をゆっくりと『マリア・シュトゥアルト』の世界へ誘っていく。だが、その口ぶりを聞いているうちに気づく。今回は、世に知られるシラーの『メアリー・スチュアート』とはどうやら様子が違うらしい。

 堀部が演じる演出家は、ひょうひょうとしているのか、軽いのか、それとも腹に一物抱えているのか。読めない。読めないまま、どこかおかしみを帯びて話が進んでいく。観客は笑いながら、いつの間にか彼の手のひらの上に乗せられている。そういう危うい心地よさがある。

 その演出家のアシスタント—演出助手として現れるのが、舟木健。彼の立ち位置は、いわば道化である。舟木は、その恵まれた容姿を駆使しながらも、本物の演出助手さながらに八面六臂(ろっぴ)の働きで舞台を回しながら、ふとした瞬間に妖しく、どこか狂気じみた匂いを漂わせる。段取りを支えているはずの男が、気づけば作品の運命そのものを誘っているようにも見える。この二人の掛け合いが、物語の「枠」をつくり、同時にその枠を揺らしている。

 そこに、楽士としての役どころも担うアラン・パットン。彼のアコーディオンが鳴るたび、空気の密度が変わる。演奏だけでなく、そのたたずまいと演技が、この世界にもうひとつのエッセンスを添えている。

 そして、二人の女王。前半にエリザベスを演じる田野聖子は、女王としての孤独を、声を張るのでも泣くのでもなく、とにかく確かに、賢明に立ち上げていく。言葉の一つひとつに、玉座の冷たさが宿る。

 マリアの貴城けいは、パブリックイメージの明るさを今回は封印した。前半、長きにわたり幽閉されてきたマリアを演じる。はかなく、それでいて目の前のすべてを魅了してしまうマリアを、りんと、そして丁寧に演じている。閉じ込められた女の静けさの奥に、確かな火が見える。

 その二人が、ある瞬間から、女優としてぶつかる。 役として対峙(たいじ)していたはずの二人が、いつしか物語の枠組みそのものをはみ出していく。与えられたせりふなのか、女優本人の言葉なのか。その境目が曖昧になっていく瞬間に、客席は立ち会うことになる。 シラーの名作を知っている人には「こんな『マリア』があったのか」という驚きを、初めて触れる人には、古典が今まさに生まれ直す現場を感じられそうだ。

(取材・文:高橋つばさ)

 舞台『マリア・シュトゥアルト』 は、東京・IMAホールにて10月28~30日/11月10~13日上演。

【公演概要】

『マリア・シュトゥアルト』

◆日程・会場
10月28日~30日、11月10日~13日:東京・IMAホール

◆原作
フリードリヒ・フォン・シラー

◆上演台本・演出
中原和樹

◆出演
貴城けい/田野聖子

舟木健

豊原功補・堀部圭亮(Wキャスト)


【公式サイト】https://m-s-stage.com
【公式X】@mari_eliza_st

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