「本当のことにしか興味がない」実話をベースに物語を作るカワモ俱楽部・田中聡&川面千晶『佐藤と加藤』インタビュー
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11月25日から浅草九劇にて上演される『佐藤と加藤』。俳優の川面千晶によるソロユニット・カワモ倶楽部の最新作であり、本当に起こったことだけを演劇にする“実録演劇”の第2弾となる作品だ。描かれるのは、アルコール依存症である漫画家・加藤に、彼に手を差し伸べようとする佐藤が翻弄される物語。モチーフとなる“佐藤さん”に田中聡が時間をかけて取材を行い、それをもとに川面が戯曲を執筆した。出演は吉増裕士(ナイロン100℃)、伊藤祐輝、ヒロシエリ、そして川面の4名。田中の実体験をベースにした前作『トレマーズとバック・トゥ・ザ・フューチャーの同時上映を観に行った僕のその後の話』に続き、今回はどのような実録演劇が立ち上がるのか。田中と川面がその裏側を明かす。
【写真】田中聡&川面千晶、“実録演劇”の裏側明かす! 撮りおろしショット
◆実話を作品の核にした実録演劇「作り話よりも、個人が実際に体験したことを演劇にしたほうが面白い」
――実録演劇の第2弾ということですが、まずは本作の企画の出発点について教えてください。
田中:これは実際にあったことだけを演劇作品として立ち上げるものなので、モチーフになり得る人との出会いと、その人への取材をベースにしています。
川面:かねてより私は、エッセイが好きなんです。というか、ノンフィクションにしか興味がない。もといた劇団が実体験を作品にするカンパニーだったので、いつからかそちらへと関心がシフトし、固まっていきました。
田中:なので、ゼロから演劇を創作するのではなく、特定の誰かが経験したことをベースに作品を立ち上げていくんですよね。前作では僕の体験談を舞台にしたのですが、一度の公演ですべてのネタを使い果たしてしまった。そこで、誰か面白い人はいないかと探していたところ、“佐藤さん”という方の存在が浮かび上がってきました。かつて彼は、“加藤さん”という漫画家の方と波乱に満ちた日々を過ごしていたそうで、少し話を聞いてみると、どんな作り話にも負けないようなエピソードがいくつも出てきた。今作ではこの佐藤さんと加藤さんの関係に焦点を当てています。
川面:作り話よりも、個人が実際に体験したことを演劇にしたほうが面白い。どんな人の人生も、自分が思っているよりもずっと面白いんですよ。私はさくらももこ先生が大好きなのですが、『ちびまる子ちゃん』ってもともとは、先生の実体験をベースにして描かれてい る。それがやがて、より創作らしいものへと発展していったんです。私たちが作るのは演劇なので、作品の中では演劇的なジャンプは少しはあります。だから完全なノンフィクションというわけではないんですけど、作品の核にあるのは“実話”なんです。
――本作ではアルコール依存症の漫画家・加藤に、佐藤が振り回される様子が描かれていきます。実録演劇というだけあって、描写が細かくて嘘がないいっぽう、高い強度のエンタメ性がつねに担保されていると感じました。このあたりのバランスに関して、どんなことを意識されているのでしょうか。
川面:酔っ払った加藤はよく無茶苦茶なことを口にするのですが、あんなものを頭で考えては書けませんよ(笑)。やっぱり、生きてる人間ってすげえなっていう。田中さんが佐藤さんに時間をかけて取材を行い、その素材をもとに作劇しています。だから私としては、特別にドキュメンタリー性とエンタメ性のバランスを意識しているわけではないんですよね。
田中:僕たちが知る加藤さん像は、あくまでも佐藤さんが語るものなんです。だから佐藤さんのフィルターがかかっているわけで、これがある意味、エンタメ性につながっているのかもしれませんね。取材は複数回に分けて行ったのですが、いつも佐藤さんは最後のほうで、ポロッと面白いことを言うんですよ。話に耳を傾けているうちに、やがて少しずつ人間のダークな部分が見えてくる。ある程度の時間をかけ、脱線などを経なければ出てこない本当の話というのがありますよね。
田中聡
川面:そうして素材がそろったら、これをもとに田中さんに第0稿を書いてもらいます。
田中:全体の構成を僕が考えて手渡して、あとはもう川面さんが演劇的に面白いものに昇華させてくれる。その間、また取材をしてネタが上がってきたら、川面さんの書いたものにはめ込んでいく。その繰り返しです。
◆実録演劇は「現実を生きる人間が持つ力」から生まれる
【公演概要】
カワモ俱楽部『佐藤と加藤』
2026年11月25日~29日 東京・浅草九劇
■出演:
吉増裕士(ナイロン100℃)・川面千晶・伊藤祐輝・ヒロシエリ
■作:田中聡と川面千晶
■演出:川面千晶