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「本当のことにしか興味がない」実話をベースに物語を作るカワモ俱楽部・田中聡&川面千晶『佐藤と加藤』インタビュー

演劇

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◆実録演劇は「現実を生きる人間が持つ力」から生まれる

──膨大な素材を前にして、川面さんはどうやってこんなにも強度のある筋の通った戯曲に仕立て上げているんでしょう。

田中:実話として面白いのと、それを演劇で扱って面白くなるのかは、まったく別の話ですよね。情報に対して、川面さんの中ではいろんな選択と決断があるはず。それは僕も気にな っていました。

川面:うーん……どうなんですかね……。音声をポッドキャストみたいに聴きながら書いているだけで、どうやって書いてるんだろう……。

田中:面白い/面白くないのジャッジは感覚的なもので、言葉にするのが難しいことなんだろうなとは思いますけど。

川面:そうですね……。書いている段階で、自分自身が「面白え!」って心から思えていないと、人前に出して面白くなるはずがない。だからとにかく、まずは私自身が面白いと思えるほうに向かって書いていき、面白くないところを修正していく。そうとしか言えないです……。

田中:だからほんと、川面さんって天才型なんですよ。感覚的に、それが実現できちゃう。前作でもそうでした。僕はネタを提供した当事者だったわけですが、素材を渡すと、見事な作劇によって一本の戯曲が立ち上がっている。情報の取捨選択も、編集も、どれも「なるほど」と納得させられるんです。

川面:これは演劇にできないなと思ったところは削っています。演っているほうも観ているほうも気まずくなるようなものは、さすがに舞台には上げられない。でもたしかにここに関しても、やっぱり感覚的に書いていますね。演劇として扱っていいものなのか、そうじゃないのか、かなり感覚的に選別しているかもしれない。

──俳優、劇作家、演出家として、つねに複数の視点で捉えているからなんですかね。

川面:自分が本当に観たいと思える演劇は、自分自身で作るしかない。それがカワモ倶楽部を立ち上げた理由でもあります。だから役者の視点でとか、演出的な観点からとか、そういう考えはあまりない気がしますね。出演してくれる人たちにとっても、観に来てくださる方々にとっても、ちゃんと面白いものを作る。それが第一で、すべてなんです。この『佐藤と加藤』は、いま私の脳内にある状態が一番面白いので、この鮮度を落とすことなく、劇場空間で立ち上げたいですね。演劇はいろんなスタンスの人間同士が集まって作るものなので、お互いに歩み寄りながら。

川面千晶

──前作『トレマーズとバック・トゥ・ザ・フューチャーの同時上映を観に行った僕のその後の話』は出演者が8名でしたが、今作は4名です。でも、登場人物はかなりの数いますよね。

川面:8人もいれば、それは何でもできる。でも限られた人数でどうにかドラマを立ち上げることに、演劇でやる意味があります。今回はそこに向き合おうと思っているんです。

田中:川面さんのこの考えを聞いて、僕としても絶対にそっちのほうがいいだろうと思いました。実話ベースの物語を、4名の俳優が役をスイッチしながら展開させていく。佐藤さんから聞かせてもらった本当の話が、より演劇的なものになっていくはずです。

川面:ただ、もしも舞台上に5人の人物が並ぶ瞬間があったらどうしようと、稽古開始前のいま、けっこうビクビクしています……。

──実録演劇の第2弾が生まれようとしているいま、川面さんの思う“ノンフィクション”の魅力についてお聞きしたいです。

川面:佐藤真監督の『阿賀に生きる』(1992 年)という大好きなドキュメンタリー映画があるのですが、新潟の阿賀で、カメラは横になっているおばあちゃんの様子を捉えていて。この寝ている彼女と家族の会話を収めているシーンで、たまたまおばあちゃんの顔の横にコンビニのアンパンが置かれていて、そのままカメラを回しているんです。これはすごいなと思いました。フィクションを撮ろうというとき、寝ているおばあちゃんの顔の横にアンパンを置くだなんて、誰も考えつきません。でも現実に、この映画に登場する女性の顔の横には、アンパンが置かれていた。「これだ」と思いました。創作の世界で生きている私が追っているのは、ああいう瞬間なんです。だからいまの私は、本当のことにしか興味がない。ああいった瞬間こそを演劇で立ち上げていきたい。実録演劇とは、ただ演劇づくりがしたくて生まれるものではありません。この現実を生きる人間が持つ力から、生まれていくんです。

田中:こうして僕らの話を聞いてくださっている折田さんを逆に取材して、演劇にしてみたら、きっとすごく面白いものになるはずですよ。だから随時、僕らはユニークな人生体験を語ってくれる人を募集しています。自薦・他薦を問わずね。

川面:すべての人の人生が、面白い演劇になる可能性を持っていますから。

(取材・文:折田侑駿)

 カワモ倶楽部『佐藤と加藤』は、11月25日~29日に東京・浅草九劇にて上演。

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【公演概要】

カワモ俱楽部『佐藤と加藤』
カワモ俱楽部『佐藤と加藤』

カワモ俱楽部『佐藤と加藤』

■日程・会場:
2026年11月25日~29日 東京・浅草九劇

■出演:
吉増裕士(ナイロン100℃)・川面千晶・伊藤祐輝・ヒロシエリ

■作:田中聡と川面千晶
■演出:川面千晶
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