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『エルピス』「堅実で丁寧な報道」の危険性 “ほぼ出番なし”鈴木亮平の存在はいかに

ドラマ

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長澤まさみ

■ほぼ出番なし “斎藤”鈴木亮平の存在はいかに


ドラマ『エルピス―希望、あるいは災い―』第8話より(C)カンテレ
 いつのまにか、浅川の言う「私たち」は、いびつながらも強固だった岸本とのことではなく、「NEWS 8」とスタッフたちになっていた。浅川は、中村優香さん(増井湖々)が年齢を偽りデリヘルでアルバイトしていたと伝える。その斡旋による男・木村の逮捕という報道だったが、同時に「中村さんの事件と木村容疑者の間に、何らかの関係があるとみて調べを進めています」とも伝えていた。浅川が岸本に言った「堅実で丁寧な報道」とは、優香さんの尊厳を傷つけ、かつての松本さんが女の子を監禁していたと報道したときのように、第二の松本さんを生む危険性を、冤罪の後押しをすることなのだろうか。

 生き残るには飲み込まれるしかないのか。ここで斎藤正一(鈴木亮平)の存在が浮かぶ。社会部エースだった彼も、多くのことを経験し、見聞きしてきたはず。その結果、自ら組織を出た。第8話はほぼ出番がなく、第7話でもいわゆる爽やかコメンテーター的な登場でしかなかった斎藤だが、大門の右腕になるためではなく、個人としても戦えるよう、ポジションを上げている最中なのだと思いたい。

 人を信じることが大きな救いになると知ったと同時に、衝撃の裏切りを描いた第8話は、それだけでなく、信じてもらうことの力を見せた。ラスト、完全に打ちのめされたように見えた岸本だったが、突然現れた武田信玄ならぬ俳優の桂木信太郎(松尾スズキ)の「僕は応援している。信じている」のひと言で、体温が戻った。こうした単純さが、岸本の強さであり、パンドラの箱に残された希望なのかもしれない。きっと岸本はまだ立ち上がる。では浅川は? 残りあと2回。本作は、現実社会に巣食う絶望を映しながら、最後は視聴者に変革への「希望」を託す作品になるのではなかろうか。(文:望月ふみ)

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