『あなたがしてくれなくても』“指一本触れない。そばにいてほしい”――新名が本当に求めてきたものと離婚への障害
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大きな注目を集めているドラマ『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ系)。4日に放送された第4話のラスト、身も心も結ばれると思った吉野みち(奈緒)に涙を流された新名誠(岩田武典)は、「もうあなたに、指一本触れない。だから、今までみたいにそばにいてほしい」と伝えた。セックスレスに悩んできた誠が、真に求めているものとは何なのか。
【写真】第4話、研修旅行で結ばれようとするみち(奈緒)と新名(岩田武典)だが・・
◆みちは、空の水槽でもがいていた誠に呼吸させてくれた水
2組の夫婦を通して、人間関係を見つめている本作。同じ職場の上司と部下の関係にある誠とみちは、それぞれに、ファッション誌副編集長として忙しく働く妻・楓(田中みな実)、カフェ店長の夫・陽一(永山瑛太)にセックスを拒まれ続け、心をすり減らしてきた。そして、ある時から悩みを共有したふたりは急接近していった。特に、いわゆるデキル男として、自分の弱さを、自分自身で認めることを許してこなかった誠にとって、“自分が妻に拒否されてきた”という事実を受け入れることは、かなり大きなことだった。
誠とみちの穏やかな空気感には似通ったところがあり、お似合いな面もあるが、いじわるな見方をすれば、新名の穏やかさは、新名のプライドが保たれてこそにじみ出る。しかし最近の誠は、母と同様に、自分が妻の“犠牲”になっていると感じていたはずで、空になった水槽でもがいていた誠にとって、自分の言動に素直に反応し、感動し、尊敬してくれるみちは、涙を拭くと同時に、やっと息をさせてくれた水のような相手だったに違いない。
◆一切描かれなかった、妻への愛の証だった料理シーン
ところで誠は、これまで妻のために食事を作り続けてきた。それは彼にとって愛の証だった。料理をし、タッパに入れて冷蔵庫に仕舞い、メモを残す。しかし4話で、楓の「誠のポーチドエッグ久しぶり」との言葉とともに飛び込んできた映像は、お皿にキレイに盛られた見た目に反して、あまりにも突然な印象が違和感を残した。これまで描かれていた、彼女のために作るという一切の工程をカットしての、形だけの料理。
ドラマ『あなたがしてくれなくても』第4話より (C)フジテレビ
さらに、誠の変化に焦り始めた楓がどうにかしなければと思いながら言った「でも、誠は分かってくれてるって思ったから」のひと言は、楓の願望の押し付けでしかない。その言葉を聞いたときの誠の視線の冷たさには心底ドキっとした。あの視線を直接くらった楓が何も感じないはずはないと思うのだが、楓は、かかってきた仕事の電話に出てしまう……。
楓が日々、頑張っているのは分かる。誠がそんな楓を支えようとしていたのも事実。結婚記念日のあの日、いっぱいいっぱいで疲れきっていたところに、誠から「今日くらい頑張れない?」と言われて、ついキレてしまった気持ちも、理解できる。でもこれまで、あまりにも誠に甘え過ぎていたことは否めない。両者の少しずつの欠けが、大きな溝になってしまった。