『御上先生』松坂桃李の圧倒的な存在感 日本教育をテーマに“いま”を突きつける
『御上先生』第1話より(C)TBS
御上を演じる松坂は、デビュー作の『侍戦隊シンケンジャー』にはじまり、映画『ツナグ』『娼年』『孤狼の血』シリーズ、『新聞記者』、ドラマ『今ここにある危機とぼくの好感度について』『VIVANT』、さらに舞台と、いわゆる王道エンタメからR18指定作品、社会派まで、高い演技力を見せてきた。本作ではその立ち姿だけでも、期待にたがわぬ圧倒的な存在感で引き付ける。同時に御上の内面はまだ霧に包まれており、是枝や生徒たちとのやりとり、彼らの視線によって、御上像が浮かび上がる。
御上自身の内面に迫るキーは、たびたび現れる幻影だ。過去の映像から、彼の兄なのかと想像させるが、その謎の青年の瞳自体、学生時代のまっすぐさと、幻影で現れる際の冷たさにギャップがある。最初に御上が言った「愛と憎しみはとても近くにあると、あなたに教えられた」の言葉も気になる。そして高校時代の御上は、“AI御上”と呼ばれるような佇まいとは、まるで異なるキャラクターに見える。彼らの過去については、ONE OK ROCKによる主題歌が流れるエンディング映像もヒントになっていそうだ。
■御上と生徒たちの“大逆転”教育再生ストーリーに期待
オリジナル脚本を手掛けるのは、松坂とは映画『新聞記者』(2019)でも組んだ詩森ろば。主に演劇界で活躍しており、社会へメッセージを送り続けている。
報道部の神崎(奥平大兼)のエピソードが中心となった第1話でも、御上は生徒を前に、「考えて」「どう思う」と問いかけた。「試験会場での殺人事件」と「教師の不倫記事」は全話を通じて描かれるのではなく、こうしたいくつかの問題を切り取り、本質に迫りながら、強いメッセージ性を放つ「個人的なことは政治的なこと」、さらには「バタフライエフェクト」といった大きな投げかけをしていくのかもしれない。
官僚かつ教師の主人公によって、生徒たちだけでなく、ドラマを見る私たちへ「考える」ことを提示する本作。教師と生徒、みんなで立ち向かっていく、“大逆転”教育再生ストーリーと、最初から銘打っているのも、ポジティブなラストを期待させて刺激する。(文:望月ふみ)