「完ぺき!」じゃなくていい。『じゃあ、あんたが作ってみろよ』は大人たちへの全力応援ドラマだ!
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さて、ここまでを見るに、正直、鮎美のほうがやっかいだ。小さな世界にいたことに先に気づき、外見こそ、第1話でガラッと変わったかに見えたが、そもそもそれも美容師の渚(サーヤ)の影響ゆえ。ミナト(青木柚)を好きになったのも、これまで出会ったことのなかった世界を教えてくれた新鮮さや、優しくされたのが、強烈に孤独に襲われていた時だったことが大きい。どう見ても自由人のミナトと、なんだかんだ「好きな人のために手料理を用意して家で待ち、その料理をおいしく食べてもらうこと」が好きな鮎美とは、端から合うはずがなかったのに。勝男は、鮎美は自分と一緒のときに、「本当の笑顔を見せていただろうか」と感じていたが、2人でオムレツを食べていたかつての鮎美の笑顔に、うそはなかったように見えた。
ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』第5話より(C)TBSスパークル/TBS
今の鮎美は、まだまだ自分の意志を伝えようとすることでいっぱいで、相手の気持ちを想像したり、汲み取ろうとするところには至っていないのだろう。その“自分の意志”をしっかり持つためにも、ただ勝男に合わせていただけでなく、好きな人のために料理すること、食べてもらうことが「自分自身、好きなのだ」と自覚することが、第一歩なのかもしれない。そのうえで、いやだ、違うと感じたことは相手に伝え、さらに相手が思っていることを“聞く耳”を持つ必要が、鮎美にはありそうだ。“自分らしさ”が欲しいなら、まずは一度、ひとりで立ってみたほうがいいかもしれないけれど。
ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』第3話より(C)TBSスパークル/TBS
世間から見れば“いい大人”と呼ばれる年齢になり、生活も世界も価値観も、凝り固まっていた勝男と鮎美が変化していく姿に、そして周りからのヘルプを得る度、世界がやわらかく広がっていく様に、知らずと応援している本ドラマ。その応援の一部には、“いい大人”になっても変われるという、私たち自身への希望も入っているのかもしれない。完ぺきじゃない自分や周りを知ったその先に、勝男と鮎美がどうなっていくのか。最後まで参加して見守りたい。(文:望月ふみ)
火曜ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』は、TBS系にて毎週火曜22時放送。

