『じゃあ、あんたが作ってみろよ』は“大人の可能性”を教えてくれた 鮎美&勝男のラストに「幸あれ!」
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今期、もっとも支持されたドラマと言ってもいい『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(TBS)が全10話で終幕。雨の別れにはじまり、晴れの旅立ちで終わった物語だった。もちろん演技に裏付けされたものなのだが、とにもかくにも、海老原勝男を演じた竹内涼真が愛らしかった。そして難しい役を繊細に演じきった、山岸鮎美役の夏帆はやっぱり素晴らしかった。特に最後の2人の会話から、初回の鮎美の「分かってほしいとも、もう思わないかな」の真意が伝わった気がした。
【写真】鮎美&勝男のラストに「ロス」『じゃあ、あんたが作ってみろよ』最終回場面カット
◆勝男の“化石化”は、鮎美が育てた面もあったと感じた初回
亭主関白思考で固定観念に縛られていた勝男と、恋人ファーストで「選ばれること」だけを考えて生きてきた鮎美が、それぞれに再生していった本作。彼らの身近にいた南川(杏花)とミナト(青木柚)の最終回の言葉は、視聴者を代弁しているようだった。「海老原さんを見てると、ちょっとだけ希望が持てるんです。少しずつでも、変わることもあるのかな」という南川。そしてミナトの「アユちゃん見てると、ちょっとずつでも人は変われるのかもなって」。
別れる前の2人は、大学でも「パーフェクトカップル」に輝いていたように、ある意味お似合いだった。俺が引っ張っていくタイプの勝男と、ついていきますタイプの鮎美……に、見えていた。しかし、鮎美はそうした自分にどこかで違和感を抱えていたのだろう。もともと今の生活に疑問がなければ、渚(サーヤ)との会話も、大きな出会いとはならなかったはずだ。しかしあのときの鮎美には、「鮎メロの好きなことは?」というシンプルな質問に答えられなかったことが、大きなショックだったのだ。
とはいえ鮎美の行動には、気になるところがあった。初回、鮎美の手の込んだ料理を前にした勝男の「しいて言うなら、おかずが茶色すぎるかな」といったイラっとする上から目線のアドバイスなどがあまりに強烈で、注目がいきがちだったが、たとえば公園でお弁当を食べるシーン。「ほとんど冷凍食品のやつあるでしょ。あれは手作り弁当ではない! 解凍弁当」と言い切る勝男に、「そうだよね」と相槌を打ち、「女の子だからじゃないよ。勝男さんのこと、大好きだから作ったの」と話す鮎美。「おいしい、おいしい」と笑顔で頬張る勝男を見て、気質を助長させているのでは? と感じずにいられなかった。
ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』最終話より(C)TBSスパークル/TBS
例の「おかずが茶色すぎる」と言われた際も「ごめんね、次からは気を付けるね」と笑顔で返す鮎美。「鮎美、かわいそう!」という反応も分かるが、これまでに勝男に苦労を伝えてきたことがあるのかどうかは分からなかった。最終回、「私ね、勝男さんのかわいくて優しいところが好きだった」と言っているだけに……。もちろん嫌われたくない、選ばれ続けたいと演技を続けてきたのだろうが。
そして、プロポーズを断った場面。「勝男さんには分からないし、分かってほしいとも、もう思わないかな」との言葉には、「分かってもらうために、これまで何か伝えたことがあったの?」という疑問が湧いてしまった。

