ブラッド・ピット、プロデューサーとしての力量を証明 今年もオスカー作品賞候補に
その言葉どおり、オーストラリア映画『チョッパー・リード 史上最凶の殺人鬼』(未)でアンドリュー・ドミニク監督を見出した彼は、ドミニクに『ジェシー・ジェームズの暗殺』を監督させた。
『HUNGER/ハンガー』を見て感動した後には、 スティーヴ・マックィーン監督のもとをブラッド自ら訪れ、『是非あなたの次の作品を製作したい』と申し出ている。その時、 マックィーンはすでに『SHAME ‐シェイム‐』の製作に取りかかっていたが、「『SHAME ‐シェイム‐』の後には奴隷に関する映画をやりたい』とブラッドに伝えた。人種は繊細な問題で、奴隷に関する映画など、普通なら、ハリウッドのスタジオは、まず作りたがらない。だが、ブラッドは、『たしかに、奴隷についての映画は、これまでなかったね。ぜひ作ろう』と即答したと、マックィーンは振り返っている。
住宅ローン崩壊の裏側を語るノンフィクション本が原作の『マネー・ショート~』も、楽しく、わかりやすく、意義ある映画にするのはとても難しいものだったはずだ。しかし、彼は、爆笑コメディばかりを手がけてきたアダム・マッケイに、この知的な素材を監督できると信頼し、結果的にオスカー最有力候補と言われるまでに持っていった。
昨年最もコケおろされた映画のひとつである、アンジェリーナ・ジョリー監督の『By the Sea(原題)』もプロデュースしたのは事実だが(彼も彼女の夫役で出演している)それは私情がからんだご愛嬌。きっと彼は、これからも、鋭い着目点のもとに、すばらしい映画を生み出してくれるだろう。(文:猿渡由紀)