『君の膵臓をたべたい』浜辺美波の演技は底知れないポテンシャル
関連 :
本作をみたとき、浜辺に対してしっかりと考えられた演技派という印象を持ったが、メガホンをとった月川翔監督は、別の印象を語っている。テストのときに打ち合わせをした演技と本番で行う演技が違うというのだ。月川監督は「感覚の人なのかもしれません」と理由を説明していたが、技術的に演じているというより、本能に近い表現ということなのだろう。
その言葉を聞いたとき、浜辺の底知れない女優としてのポテンシャルに驚かされた。自身と対極にあるキャラクターをその場で湧き出てきた感情に従い演じ、しっかり世界観を崩さないというのは恐れ入る。
その部分について月川監督は「もともと桜良に“僕”が翻弄されるという関係性だったので、浜辺さんのこうしたライブ感に北村くんが翻弄されるという構図は、物語により説得力を与えた」と語っていた。すべてがプラスに向かっていったというのだ。
こうした浜辺の女優としてのポテンシャルには唸らされるが、もう一つ彼女の魅力として挙げられるのが、声のすばらしさだ。共病文庫を読むシーンは、物語で重要な役割を果たすが、語りかけるような浜辺の声は、作品により一層の深みを与えている。動きある桜良と、命を失った思い出の桜良。この表現力の対比にもぜひ注目してもらいたい。(文・磯部正和)