『BANANA FISH』アッシュはいかにして伝説になったのか? 色褪せぬ魅力に迫る
改めて思うのは、吉田が“孤独”を見事に描き出す漫画家だということ。そして孤独を抱えた人が出会いを通して変化していく様を、丁寧に描き切る。誰も信じず、“美しく危険な獣”だったアッシュ。彼がまっすぐに自分を受け止めてくれる英二と巡りあったとき、英二の前では顔を赤らめたり、小さな子供のように涙をこぼす。2人の結ぶ絆からは、「この世には裸の自分を愛してくれる人がいる」という希望があふれる。アッシュという、弱さと強さを持った伝説的ヒーローの存在。そしてアッシュと英二が見せてくれた“希望”こそ、本作の最大の魅力と言えよう。
原作ファンにとっては長年、大切に思い続けてきた作品だけに、アニメ化に際してざわつかずにはいられない。先日、解禁となったアニメ版PVでは、物語の舞台が“現代”に変更されていることが判明。アッシュがスマホを持っていることが話題となるなど、「おや?」と思った場面も。しかし原作の大ファンで、企画を担当したアニプレックス・瓜生恭子の「原作を読んだことのない世代にも本作の魅力を伝えたい」との言葉に大きくうなずいた。確かに時代設定が馴染みのないものだと、ドラマ性を受け止める反応が鈍くなってしまうこともあるだろう。アッシュの輝き、アッシュと英二の絆は、時代設定を変えたからといって色褪せるはずがない。若い世代の胸にも必ずや響くはずだ。
原作ファンが制作を担い、アッシュ役の内田雄馬、英二役の野島健児ら声優陣もコミックスを読み込んでいるとのことで、原作愛にあふれた作品になりそうなことがビシビシと伝わるのがうれしい限り。動くアッシュも美しい!吉田秋生も「やばい。あたしよりウマい(笑)」との最高の賛辞とも思えるコメントをアニメ公式サイトに寄せており、7月の放送に向けて期待が膨らむばかりだ。
TVアニメ『BANANA FISH』は2018年7月よりフジテレビ“ノイタミナ”で放送開始。