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“発禁の書”を映画化した『異端の鳥』 少年の過酷な体験を通して向き合う人間の善と悪

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映画『異端の鳥』メインビジュアル
映画『異端の鳥』メインビジュアル(C)2019 ALL RIGHTS RESERVED SILVER SCREEN CESKA TELEVIZE EDUARD & MILADA KUCERA DIRECTORY FILMS ROZHLAS A TELEVIZIA SLOVENSKA CERTICON GROUP INNOGY PUBRES RICHARD KAUCKY

 11年の歳月を費やし、本作を完成させたチェコ出身のヴァーツラフ・マルホウル監督は「この物語は悪についての探求だ」と語っている。同時にそれは、過酷な物語と対峙(たいじ)して、どうにかして善と共感、愛を見いだそうとする人間の本能をあぶりだす試みでもある。罰を与えられなければ、人は悪へと向かうのか。人生の闘いにおいて、悪は避けられない存在なのか。監督は「まだそんな質問への答えを探し続けている」と率直に語る。特にこの時代における「答え」を知りたいから、と。「それでも人間は善を求めている。それが映画のポジティブなメッセージなのです」。

ヴァーツラフ・マルホウル監督 (C)Jan Dobrovsky
 心をかき乱す残酷な暴力描写に対しても、監督はいたずらに露悪的な演出は避け、常に客観的な視点を保つよう心がけた。ショッキングな場面で素早くカットを割ってごまかしたり、無駄に長引かせて不快感をあおったりはしない。上映時間は堂々3時間、作家性の強いモノクロ映画ではあるが、35mmフィルムの映像は端正で詩心にあふれ、演出には文学の香り(原作はポーランドの作家イェジー・コシンスキが1965年に発表した『ペインティッド・バード』。母国では発禁書となった)と風格が漂う。とはいえ、語り口は決して気取ることはない。粛々と続く残酷絵巻に有無を言わさずわれわれを引き込んでしまう。

 地獄への案内役となる主演のペトル・コトラールは、演技経験もない無名の少年だが、無口な瞳は何よりも雄弁に感情を物語る。2年を費やした撮影はすべて物語通りに順撮りされ、彼の心と体の成長を刻んだ歳月の重みがフィルムから伝わる。

(C)2019 ALL RIGHTS RESERVED SILVER SCREEN CESKA TELEVIZE EDUARD & MILADA KUCERA DIRECTORY FILMS ROZHLAS A TELEVIZIA SLOVENSKA CERTICON GROUP INNOGY PUBRES RICHARD KAUCKY
 共演陣にはステラン・スカルスガルドにハーヴェイ・カイテル、ジュリアン・サンズ、バリー・ペッパー、ウド・キアら、ひとクセある渋い演技派を配置。有名俳優の登場は虚構性を強く意識させるが、本作は嘘から「真実」を引きずりだす映画本来の底力にあふれている。

 映画『異端の鳥』には鮮烈なメッセージがある。だが、そのメッセージのどこに共鳴し、どんな教えを得るかは観る側に託されている。監督が一切の妥協なく、誠実な心で紡ぎあげた入魂の1本。深まる秋にじっくりと味わいたい力作である。(文・山崎圭司)

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映画『異端の鳥』予告編

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