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“発禁の書”を映画化した『異端の鳥』 少年の過酷な体験を通して向き合う人間の善と悪

映画

映画『異端の鳥』メインビジュアル
映画『異端の鳥』メインビジュアル(C)2019 ALL RIGHTS RESERVED SILVER SCREEN CESKA TELEVIZE EDUARD & MILADA KUCERA DIRECTORY FILMS ROZHLAS A TELEVIZIA SLOVENSKA CERTICON GROUP INNOGY PUBRES RICHARD KAUCKY

 幼い少年を襲う容赦ない迫害の数々に、賛否両論真っ二つ。昨年のヴェネチア国際映画祭での上映では途中退場者が続出する一方で、10分間スタンディングオベーションの拍手が鳴りやまず、ユニセフ賞を受賞。本年度アカデミー賞国際長編映画賞のチェコ代表に選出され、本国チェコ・アカデミー賞(チェコ・ライオン)では最多の8部門に輝いた映画『異端の鳥』。世界を圧倒した衝撃作がいよいよ日本公開を迎えた。

【写真】“発禁の書”を映画化『異端の鳥』フォトギャラリー

 第2次世界大戦下、ナチスのホロコーストを逃れて、ひとり田舎に疎開した少年。胸元に小さなイタチを大事に抱えて懸命に逃げる彼が、村の子どもたちに囲まれる巻頭から、観客は3時間、想像を絶する激しい暴力の嵐にさらされる。少年が身を寄せる先の老婆が突然病死し、ショックで取り落としたろうそくの炎で小さな家は全焼。瞳や髪、肌の色が違う彼は「異端のよそ者」として村を追われ、あてどない流浪の旅に出る。

(C)2019 ALL RIGHTS RESERVED SILVER SCREEN CESKA TELEVIZE EDUARD & MILADA KUCERA DIRECTORY FILMS ROZHLAS A TELEVIZIA SLOVENSKA CERTICON GROUP INNOGY PUBRES RICHARD KAUCKY
 行く先々で忌み嫌われ、差別と迫害の日々に大人の醜さを垣間見る少年。地獄巡りの旅路で出会うのは、妖しげな占い師や嫉妬深い粉屋、粗暴なコサックにナチスの老兵。余命わずかな司祭と悪魔の本性を隠した非道な男、そして寡黙な狙撃兵。年齢も境遇も違う大人たちから差し伸べられる手は、一瞬の安らぎをもたらしたかと思えば、予測もつかない修羅場へと少年を導く。

 命を削るような数珠つなぎのエピソードのなかで、特に印象的なのが「異端の鳥(ペインティッド・バード)」という題名を象徴する、鳥売りの男との交流だ。彼は戯れに小鳥の羽にペンキを塗って空に放つが、「異端」の姿となった小鳥は群れの仲間に攻撃され、無残な姿で地に落ちる。

 やがて、恋人の死を知った鳥売り男は首をくくる。初めは自殺を止めようとした少年は、まるで途中から彼を苦しませないよう、自ら重しとなってその体にぶら下がる。純粋な善意と残酷な行為が重なって見える、少年の内面をえぐるような哀しく切ない瞬間だ。

(C)2019 ALL RIGHTS RESERVED SILVER SCREEN CESKA TELEVIZE EDUARD & MILADA KUCERA DIRECTORY FILMS ROZHLAS A TELEVIZIA SLOVENSKA CERTICON GROUP INNOGY PUBRES RICHARD KAUCKY
 善人だが結局は無力な人、冷酷であっても生きる知恵をくれる人。単純に善悪で割り切れない出会いを通し、少年は少しずつ大人になってゆく。それは生きるために無垢(むく)の童心を捨て、より複雑な矛盾を抱え込んでゆく日々の記録でもある。戦争の悲劇と無常を遠景に置く厭戦(えんせん)物語のなかに、人間のもろさや残忍さをあぶりだす寓話の趣きだ。

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映画『異端の鳥』予告編

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