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実写もうらやむ豪華俳優陣 『もののけ姫』石田ゆり子&美輪明宏ら“声の演技”に注目

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■宮崎監督が専業声優ではなく、俳優を起用するようになった理由

 なぜ専業声優ではなく、俳優をキャスティングするのか? これは、本作に限らず、アニメ・ファンにとって大いに気になるポイントだろう。

 宮崎監督は『となりのトトロ』でコピーライターの糸井重里をお父さん役に起用しているが、その際に「プロの声優の声をいろいろ聞いたが、どれも“いいお父さん”になりすぎている」という旨の発言をしている。また、声優のスキルとしての“声の作り込み”について「存在感のなさに欲求不満になるときがある。あれが堪(たま)らない。なんとかしたいといつも思っている」とも。

 この点については、『もののけ姫』でタタラ場の番子・トキ役で起用されている島本須美のエピソードが興味深い。島本は、宮崎監督作『ルパン三世/カリオストロの城』『風の谷のナウシカ』でヒロインを演じただけでなく、『めぞん一刻』の音無響子役でも人気を博してきた実力派声優。それにもかかわらず、『もののけ姫』収録時にはNGを出しまくったというのだ。前述のドキュメンタリーでは、苦闘する島本に対して宮崎監督が「職業上の仮面があるね」と発言。やはり“声優としてのスキル”が不要だと匂わせている。

 「声の持っている存在感、これは自分では作ることのできないものですよ。上手い下手じゃないですね。持っているか、持っていないか」とは本作公開時の監督の発言だが、スキルよりも存在感を突き詰めることが、俳優を起用する理由となっているのは確かだろう。

■俳優陣の“声の演技”によって、監督自身もキャラクター像を理解

 本作のキャスティングの方針・理由については、当時32歳で音響監督を務め、宮崎監督作では『千と千尋の神隠し』『ハウルの動く城』も手掛けた若林和弘の「キャラクターの人間性と、それを演じる役者の人格が一貫していることを重視した」という発言からもうかがえる。サン役の石田ゆり子がNGを繰り返し、宮崎監督から何度も細かい指示を受けて修正していく度に混乱したことは先にも述べたが、そうした石田自身の葛藤や苦悩、成長が、サンというキャラクターそのものに投影されている。それは「もっと強い子だと思っていた」という宮崎監督自身の予想を超えて、「ただ強いだけじゃなくてずいぶん無理をしている」というキャラクター像を育て、そして、「なるほどと思った。石田ゆり子さんのサンをすっかり受け入れた」と言わしめるほどになった。

『もののけ姫』より (C)1997 Studio Ghibli・ND
 宮崎監督は「(当初は)声も含めた人物像としては、自分でもよく分からない部分があった」と語っている。それが、アフレコが進むにつれて「いろんな人(出演者)に補完されて、『ああなるほど、こういう人物だったのか』と分かった」と変化していく。これはまさに、キャラクターに息吹を吹き込んだ出演陣が持つ“声”の力のたまものだ。今回の放送ではぜひ、改めて、“声の演技”に集中して観てみることをおススメしたい。(文:村上健一)

※興行収入193億円は当時の国内歴代興行収入No.1。2020年に再上映され、累計興行収入は201億8000万円。

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