『鬼滅の刃』なぜ人は鬼に勝てるのか? 魘夢戦で見えた、勝負を分ける戦闘ロジック
日本国内の映画興行収入約400億円を突破、公開から約2ヵ月で歴代興行収入1位の記録を更新した『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』。日本のアニメ史と映画史にその名を刻んだ作品が、本日21時よりフジテレビ系にてテレビ初放送される。そこで本作で敵として登場する鬼・魘夢(えんむ)と猗窩座(あかざ)にフォーカスしながら、鬼と人間の戦い方を考察する(原作のネタバレを含みます。ご了承のうえ、お読みください)。
【写真】夢の中で家族と再会する炭治郎 『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』場面写真
本作は、「週刊少年ジャンプ」(集英社)にて連載された同名漫画を原作とした劇場アニメ。2019年に放送されたテレビシリーズは、人と鬼の切ない物語、鬼気迫る剣戟(けんげき)シーンの映像クオリティなどが話題となり、世を席巻。テレビシリーズに続く物語が描かれた『無限列車編』では、心優しい主人公・竈門炭治郎の怒り、責任感が強く人情に熱い炎柱・煉獄杏寿郎(※)の姿が観客の心を動かした。
そんな炭治郎や煉獄と無限列車で対峙したのが、鬼の精鋭“十二鬼月”の猗窩座と魘夢。彼ら鬼とは一体どんな存在なのか。
■十二鬼月と鬼舞辻無惨
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』場面写真 写真提供:AFLO
本作における鬼は並外れた身体能力と再生能力を持ち、基本的には日光を浴びることで死ぬ超常生物。人を喰らうことでその強さを増し、中には「血鬼術」と呼ばれる特殊な力を使える者もいる。そんな鬼たちは、突如として現れた訳ではなく、“はじまりの鬼”である鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)の血を与えられ、その血に適応できた人間が変状する。
中でも無惨によって選ばれた鬼の精鋭は十二鬼月と呼ばれ、飛びぬけた力を持つ。十二鬼月は上弦・下弦に分かれており、それぞれ壱~陸の序列が存在。下弦より上弦、数字は壱に近いほど強く、特に上弦のメンバーは炭治郎たちが所属する鬼狩り組織・鬼殺隊の中でも屈指の実力を持つ“柱”をもしのぐほど強い。
■他人の不幸が好きな“下弦の壱”魘夢
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』場面写真 写真提供:AFLO
魘夢は、下弦のなかで最も強い“壱”の数字を与えられた十二鬼月のひとり。テレビシリーズで炭治郎ら鬼殺隊を追い詰めた下弦の伍・累(るい)よりも序列は上だ。他人の不幸や苦しみを見ることで幸福を得る性格で、対峙する相手を強制的に眠らせて、夢の世界へと誘う血鬼術を使用する。無限列車では炭治郎に家族の夢を見せて怒りを買った。
人間だった頃から残忍な性格をしていたようで、子供時代は夢と現実の区別がつかず周囲を困惑させ、大人になってからは医者でもないのに催眠療法を悪用して病気の人をだます行為を繰り返していた。これが影響してか、鬼になってからも夢を見せる血鬼術で人間たちを惑わせて快楽を得ていた。
■強者に敬意を示す“上弦の参”猗窩座
猗窩座は、上弦の“参”に位置する十二鬼月のひとり。策に頼らない真っ向勝負を好み、強さを認めた相手に好意的な態度を示す一方で、弱者を徹底的に嫌う。血鬼術も肉弾戦で戦う彼らしく、自身の身体を強化するというものだ。
そんな猗窩座も、以前は狛治(はくじ)という人間だった。幼い頃は、病気の父の薬代を稼ぐために盗みを働き、捕まる度に体に罪人の証である入れ墨を刻まれた。その後、父の死に途方に暮れていた時に、とある道場の主と出会い、そこで頭角を現す。同時に娘の看病を任された狛治は、18歳のときに道場の跡継ぎにも指名され、娘と結婚することになる。
しかし彼の強さに嫉妬した隣の道場の者によって、娘と道場主が毒殺されてしまう。大切な人を再び失った狛治は隣の道場に単身で乗り込み、60人以上を殺害。そこで無惨と出会い、鬼になる道を選ぶ。彼の異常な身体能力と強さ、そして肉弾戦で挑むスタイルは、こうした過去が影響しているのだろう。