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傑作『エクソシスト』の恐怖を“深堀り” 母クリスの不安、汚されたマリア像の謎…原作小説から検証

映画

●苦悩する男 カラス神父と聖ヨセフのメダル

 クリス邸を訪れた映画監督のバークが変死を遂げ、醜悪な姿に変貌したリーガンは十字架で自慰を行い、首をグルリと回転させてバークの声で母クリスをなじる。映画のハイライトである衝撃の悪魔的光景は、気丈なクリスを打ちのめし、彼女は藁にもすがる思いでジョージタウン大学で精神科医を務めるカラス神父に悪魔祓いを依頼する。

 原作のカラス神父は46歳。ニューヨークのスラム街出身である彼の少年時代は苦く悲しい記憶で塗り潰されている。家主の厳しい追い立て、貧しさから死なせてしまった病気の愛犬。級友の女友達と歩いていて、街角で屑箱を漁る母親に出くわしたこと。その母親は70歳を迎え、マンハッタンの老朽アパートで孤独死しているのを管理人に発見された。死後2日が経過していた。

映画『エクソシスト』(1973) 写真提供:AFLO
 「これはホラーではなく、信仰の神秘と善悪の戦いの物語だ」と、本作の監督ウィリアム・フリードキンは語る。その言葉通り、映画は特にカラス神父の心理に焦点を当てる。そのひとつが彼を苛む夢のシーンだ。

 街角の雑踏、暗い地下鉄の入口へと消えてゆく老母。映画版では必死に母を呼びとめるカラス神父の姿に、メダルが落ちてゆくカットが挿入される。赤ん坊のイエスを抱く養父の聖ヨセフを刻んだこのメダルは、小説には登場しない映画版だけのアイテム。父親の存在が明言されないカラス神父を象徴する小道具だ。

 映画の巻頭、同じ聖ヨセフのメダルがキリスト教以前のイラクの古代遺跡から出土し、それを手にしたメリン神父が「奇妙だ」と呟く場面がある。このメダルが悪魔祓いの終盤でカラス神父の首からリーガンによって引き千切られるのも印象に残る。彼女もまた、父親の不在に胸を痛める少女だからだ。

映画『エクソシスト』(1973) 写真提供:AFLO
 悪魔祓いが終わり、寝室で見つかったメダルは母クリスの手から、カラス神父の親友であるダイアー神父に渡される。『エクソシスト ディレクターズカット版』では、神父がメダルをクリスに返す部分が追加された。この変更について「信仰心の象徴をクリスとリーガンに託した」と監督は明かしている。

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●悪魔の正体とは―?

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