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松村雄基、大映ドラマ不良役は“悔しさ”が原動力 芸歴40年超も「ようやくスタートライン」

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「来年還暦だなんて、自分も信じられない(笑)」

 6月4日からは、アーネスト・トンプソンによる戯曲を舞台化した『黄昏』が幕を開ける。『黄昏』は老夫婦とその家族のひと夏の日々と心の交流を描く物語で、1981年にはヘンリー・フォンダ、ジェーン・フォンダ、キャサリン・ヘプバーンの共演で映画化され、アカデミー賞をはじめ数多くの映画賞を受賞。以来、今なお世界中で上演され続けている。文学座の鵜山仁による新演出での上演は、2018年版、2020年版に続き、今回で3回目の再演。松村は老夫婦の娘の恋人・ビル役を2018年版から続投している。

 松村は「3回も再演がかなった舞台は、僕の40数年の役者人生の中で2作品だけなんです。これは、役者としてものすごく光栄で幸せなこと。とても思い入れのある作品になりました」と感無量の面持ち。高橋惠子や瀬奈じゅん、石橋徹郎、林蓮音、そして石田圭祐といった共演者たちとは「家族のようになっている」そうで、「惠子さんがみんなをおおらかに包み込んでくれるんです。この作品のメンバーには、どんな芝居をぶつけても必ず受け止めてくれるという信頼があります」と素晴らしい関係性を築いている。

 忍び寄る老いや、親子の確執を描きつつ、家族の絆を確かめていく物語だが、再演をするごとに「発見がある」と不朽の名作と言われる理由をかみ締めているという。「人間は失敗もするし、愚かなこともするけれど、その中で誰かを許したり、支え合ったりしながら、自然と共に生きている。一瞬一瞬をおろそかにして生きてはいけないということも、決して押し付けがましくなく、さりげなく教えてくれるような作品」と松村自身、本作に魅了されている。


 背筋をピンと伸ばし、エネルギッシュに俳優業について語る姿からは、来年還暦を迎えるとはとても思えない。素直にそう伝えると、松村は「僕も信じられない! 60歳なんて、もっとちゃんとしているものだと思っていました」と照れ笑い。しかしながら年齢を重ねることの良さを実感することも多いそうで、「経験が増えるごとに、心のひだも増えている。台本に書かれた一行のト書きからも、喜び、悲しみ、痛みなど、いろいろな角度からその役柄の感情を考えることができるようになったと思います」と心豊かに生きている。

 60代の展望は、「明日のことすら、どうなるか分からない世の中。“明日はない”というくらいの気持ちで、精いっぱいに今日を生きる。これに尽きます」とキッパリ。「これは明日やろう、いつかやればいいだろうと延ばし延ばしにしない。これまでも無我夢中、ガムシャラに生きてきましたが、よりガムシャラに。後悔しないためにも、意識的、思惟的にガムシャラに生きていきたい」ととことん熱いのが松村流。その姿勢を身に付けられたのは、「うちの事務所の社長はいつも、“とにかくやれ、なんでもいいからやれ。目の前は宝の山だ。恐れずに進め”と言っています。“失うものは何もないから、行け”と背中を押してくれました。僕が14歳の時に出会ってから、もう45年になりますね。その言葉が、いつも僕の根底にあるように思います」と大切な出会いによるものだ。

 インタビュー中も温かな笑顔を絶やさず、周囲への感謝と芝居への情熱をあふれさせた松村雄基。数々の不良役も、彼が演じたからこそ心根に優しさが見え隠れするような、今なお忘れがたい魅力を放つキャラクターになったことを実感するとともに、これからの活躍がますます楽しみになった。(取材・文:成田おり枝 写真:高野広美)

 舞台『黄昏』は、6月4日東京・江東区文化センター ホールにてプレビュー公演、6月8・9日大阪・枚方市総合文化芸術センター 関西医大 小ホール、6月11・12日兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール、6月14・15日石川・北國新聞赤羽ホール、6月18・19日愛知・穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール、6月21日~26日東京・紀伊國屋ホール、7月9日長野・長野市芸術館 メインホールにて上演。

舞台『黄昏』メインビジュアル

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