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鬼才パク・チャヌク監督 週52時間労働が定着した韓国映画業界は「望ましい方に変わっている」

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2人がかりで韓国語を指導

 チャヌク監督によると、俳優が外国語で演技をする時、まず音としてセリフを覚え、それを発して演技をするという方法をとるという。しかし、ウェイは、そのやり方では納得せず、文法を一から学んで、単語そのものの意味まで知りたいと考えた。さらに、自分のセリフだけではなく、相手のセリフもちゃんと理解してから、演技に挑むタイプだったそうで、チャヌク監督は「ある意味、愚直すぎる」と少し笑いながら彼女の役作りを話す。

『別れる決心』場面写真 (C)2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVED
 「私は彼女に2人の先生をつけました。1人は文法を指導する先生、そしてもう1人は演技ができる韓国語の先生です。演じながらどう言葉を発すればいいのかを、理解できるようにするためでした。さらに、演劇俳優である女性に、私が演技指導した上で、ソレのセリフを録音してもらい、ウェイさんに渡しました。あと、どうして必要なのかわからなかったんですけど、僕の声でも欲しいと言われ、男ではあるんですけど、ウェイさんが言うべきセリフを録音して渡しました。ヘジュンのものも必要だということで、ヘイルの音声も渡しています。ウェイさんは、それらをずっと聞きながら練習していました。きっと嫌になってしまうほど時間もかかるし、大変な作業だったと思いますが、彼女はやり遂げてくれたのです」。

 ソレを作り上げるためにこれだけの労力をかけたほか、企画、事前打ち合わせ、撮影現場、どの段階でも真摯(しんし)に作品と向き合うチャヌク監督からは、骨が折れるようなプロセスが透けて見える。その一方で、チャヌク監督は、映画業界における労働環境の改善に取り組んできた監督でもあり、前作『お嬢さん』の段階で、1日12時間、週52時間労働を厳守し、女性同士のベッドシーンは女性のスタッフで固めるなど、撮影に関わる人たちを守る環境づくりを行ってきた。あれから6年以上たった今、現在の韓国映画業界の労働環境は過去より改善されているとチャヌク監督は語る。

 「韓国では、『お嬢さん』の時のような働き方が完全に定着して、週52時間労働を守らなければならないようになりました。一昔前の『渇き』の時は、徹夜作業が多かったので苦労して帰っていましたし、他の作品も同じような環境で作っていました。今はもう時代が変わり、ルールを厳守しなければいけないので、昔に比べると、同じ分量でも撮影回数は増えていますが、望ましい方に変わっているなと思います」。

『別れる決心』場面写真 (C)2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVED
 作品を支える人々の働く環境を守り続けた上で、美的感覚が光るショットや、甘美で危険な香りすらする役者の演技を引き出すチャヌク監督。そんな彼は、今後について「仮に『オールド・ボーイ』のような作品を撮ったとしても、『パク・チャヌクが愛の映画を作ったんだな』って言ってもらえるようにしたい。今は、それを楽しみにしています」と話す。過激描写ももちろん目を見張るが、このような映画づくりの姿勢を見ると、やはり彼は“愛の人”だということを再確認させられる。(取材・文・写真:阿部桜子)

 映画『別れる決心』は全国公開中。

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