坂東彌十郎、『鎌倉殿の13人』で66歳のブレイク “時政パパ”人気は「完全に三谷さんのおかげ」
――今は広がり続けている歌舞伎の世界のもう一つの入り口として、『鎌倉殿の13人』をきっかけとした新しいファン層もいるのではないですか。
彌十郎:ドラマをきっかけに観に来てくださる方も確かにいらっしゃるので、ご覧になった方にガッカリされないよう、既存の歌舞伎を磨き上げなければいけないと身が引き締まる思いです。僕は今まで映像仕事の経験があまりなかったので、チャンスを頂き、その後もお声をかけていただけることが、本当にありがたくて。やってみると、今まで知らなかったことがたくさんありますし、それは何かに使えるのではないかなとも思います。どれも無駄にはしたくないですよね。
――映像の仕事で、新たな発見もありましたか。
彌十郎:いつもそうですが、もっとできたなと感じることですね。古典をやっているときもそうですが、必死に勉強しているつもりでも、「ああ、まだ足りないな」と毎回感じます。常に新しいことを吸収していきたいですね。
――映像の仕事では、『MIU404』(TBS系/2020年)に外国人労働者の管理団体の長の役でゲスト出演されていましたね。映像の仕事を積極的に受けるようになったきっかけは何ですか。
彌十郎:昔から舞台が休みの月に、例えば『暴れん坊将軍』に出るみたいなことはあったのですが、現代劇は、僕はダメだと思っていたので、経験もなかったし、当然オファーもなかったんですね。そんな中、『MIU404』は、マネージャーさんが映像仕事にトライさせようと思ってくださったんだと思います。
――一転して、『鎌倉殿の13人』では非常にかわいい、親しみやすい時政を演じられ、ネットでは「パッパ」と呼ばれています。66歳のブレイクをご自身ではどのように受け止めていらっしゃいますか。
彌十郎:あれは、完全に三谷(幸喜)さんのおかげです。三谷さんからはたまにメールが来て、それにお返事する程度で、あまり個人的なお話はしたことがなかったんですよ。でも、うちの家族に言わせると「普段の素顔を知っているんじゃないの?」と思うほど時政は普段の僕に似ていたようです(笑)。
――三谷さんが彌十郎さんをあて書きされた部分もあるのでしょうか。
彌十郎:いや、分からないですね。三谷さんがどこかで見ていてくださったのか、三谷さんの想像だったのか……。『三谷かぶき』のときに1ヵ月間お稽古をつけてもらいましたが、僕は自分の席で台本を読んだりしているだけで、直接お話したことはあまりないので。そもそも時政役については、最初、「江戸の長屋の親父だと思ってやってください」と言われて、名家とは全然イメージがつながらなかったんですよ。それで台本が来て、読んでみたら「そういうことか」と腑に落ちた感じです。
――時政パパと、『クロサギ』の御木本のギャップの大きさにも驚きました。
彌十郎:今まで歌舞伎以外の舞台もいろいろやらせていただいてきましたが、敵役をやるときが実はすごく面白いんですね。役に対するイメージが明確にあるから「やってる」気がするんです。時政は逆に、家族のシーンとかあんまり「やった」感がなく、普通にそこにいただけみたいな感覚でいさせてもらいました。