安田章大、「命はいずれ尽きる」身を持って体験した思いが今を楽しく生きるポジティブさに
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PARCO PRODUCE 2024『あのよこのよ』チラシビジュアル
――先ほど、昨年70本以上の舞台を御覧になられたというお話がありましたが、何かきっかけがあったのでしょうか?
安田:観たいという意志がただただ盛り上がっていっただけです。もともと演劇は大好きでした。20歳すぎたころに劇団離風霊船さんからスタートし、『赤い鳥逃げた…』という芝居で衝撃を受けたのが一番最初のきっかけだと思います。
たくさん舞台を観るようになって、フライヤーでも、まず見るのは舞台監督さんや演出家さん。そして、美術さん、衣装さん、照明さんのクレジットから見るようになりました。そうすると、こういう方たちが作り上げるからこういうステージになっていくんだ、次は演出家さんがどんな演出の付け方をするのだろうというところに目が行くようになって。そのうち、この演出家さんはどこどこ出身だからこういう方々を使われているんだなと経緯がどんどん見えてきて、自分の好きな芝居の毛色も見えてきたんです。
僕は“においのする芝居”をする方が大好きなんです。見た感じ上手という感じには受け取れなくても、惹きつけられて鼻をくいくいしたくなる、「芝居のにおいって香ばしい~!」って思うようなお芝居。あるDVDで唐十郎さんが「くさいにおいのする芝居をしろよ!」って言っているのを見た時に、「あ、一緒だ」って思いました。
――安田さんの舞台に対する愛情が伝わってきます。
安田:僕は、毎公演、命尽きていいと思って板の上に立っています。基本的にセーブするってことを知らない人間なので、全公演当たって砕けてる感じなんです。観に来てくださっている方々と、肉体稽古をしている感じで、ぶつかり合って、その感覚で立っているから楽しいんですよね。
ちゃんと全公演終わったら疲れているので、たぶん体力を消耗はしているんじゃないですか? だけれど、心は元気なんで、疲れないんです。めっちゃくちゃポジティブで、ポジティブのさらに上にいった感覚です。
――そうしたポジティブさはどこから生まれたものなのでしょうか?
安田:それは、命はいずれ尽きるからです。「今ここを生きれなきゃ明日は楽しく生きれない」という言葉が大好きなのですが、僕は命をなくした経験を何度かしているので、そのおかげで今楽しく生きられているんだと思います。「ただただ生きようぜ!」「今起きていることだけ楽しんで行こうぜ!」って。病気を経験して、次もう1回アクシデントがあった時は、100%死んでるかなと思いました。でも今生きてるんで、「私、今ボーナスライフじゃん!」って。
僕は常々、今3度目の人生を生きていると感じているんです。最初の手術をした1回目があって、頑張って生き返っていってる最中に、渋谷(すばる)が辞める時の会見に出られなかった出来事があって、それが2回目の死で。今はそこからまた頑張って一生懸命生きている最中なんです。
――そんな安田さんの今を生きる熱量が詰まった本作ですが、作品を楽しみにしている皆さんにメッセージをお願いいたします。
安田:僕にとって演劇は、観に行く側としてはエネルギーの補給でしかないです。どんどん力が湧いてくるし、技術面でたくさんのことを吸収させてくれる場所。そして、発信することをワクワクさせてくれるものでもあります。そんな舞台って、みなさんのエネルギーが混ざることで100%や120%になって、初めて完成するんです。
せっかく時間を頂戴して観に来ていただくんですから、その時間は外のことを忘れて楽しもうよというメッセージを豪さんと共有しています。今回も豪さんに精一杯遊びを入れていただいて、来てくださる方々が、心があったまってウキウキして帰って行っていただける作品をお届けできたらうれしいです。
(取材・文:田中ハルマ 写真:高野広美)
PARCO PRODUCE 2024 『あのよこのよ』は、東京・PARCO劇場にて4月8~29日、大阪・東大阪市文化創造館 Dream House 大ホールにて5月3~10日上演。