松岡昌宏、『家政夫のミタゾノ』が10年愛され続ける理由は「拒否反応」 “変えない”ことにこだわり
――松岡さんがこのミタゾノシリーズを10年かけてやってきた中で、役者としてこのシリーズから得たことは?
松岡:普段、出演させてもらっている他のドラマだったら、今のご質問に「こうですね」と言えるのでしょうが、この作品に限っては、こだわったのは最初のシーズン1のときに作ったであろうキャラクターを変えないことなんですよ。あまり色付けもせず、作ったキャラクターを淡々とこなしていくことが求められているのかなと感じるとともに、どこまでやれば喜ばれるのかを考えてきただけでした。観ていただいている方から「こんなところが好き」と言っていただきますが、そこに媚びることはなく、変えることはしない。そのオリジナリティーの中で、背景を少し変えて、パートナーを変えていくことをしてきました。パートナーが変わることで見え方が変わってくるんですよね。彼女たちのセリフの言い方が変わることによって、それを受けるこちら側が変わらなくても、彼女たちが変えてくれるから見方がちょっと変わってくる。そういうことなんです。もし、こだわりを聞かれるのであれば、「ミタゾノは変えない」ということなのだと思います。
――変えたいという思いはなかったですか?
松岡:変えるならやめます。
――変えない難しさは感じますか?
松岡:それはないです。むしろ、変えない方が楽です。だってキャラクターがずっと一緒なわけですから。役作りがいらないんです、この作品は。
――では、本作に限らず、松岡さんが舞台に立つことの面白さ、舞台でのお芝居の魅力はどんなところに感じているのですか?
松岡:元々、自分は舞台はやらないって言っていた人間なんですよ。芸能人になって有名人になりたかったので、それが歌手だろうがタレントだろうが役者だろうがなんでもよかったんです。有名になれればいい。舞台は観てくださる方の人数が限られてしまうので、だからテレビに出たい。ただ、もし道を歩いていて、知らない方から「松岡くんじゃない!?」と言われるようになったら舞台に出ると言っていました。24歳のときに、巣鴨でロケをしていておばちゃんたちに「松岡くん!」と言われて、それで「舞台をやらせてください」と言って、劇団☆新感線の『スサノオ~神の剣の物語』をやることになりました。僕はそれまで舞台はやっていないんです。それくらいはっきりしていたんですよ。
実際に、舞台に出演させていただき、その世界を味わって感じたのは、やっぱりライブが好きだということでした。ライブをやっていないと、自分の中でズレが出てくるんですよ。ライブは好きだし、そこをずらしたくないなという思いから舞台を続けるようになったというのが一つありました。ちょっとかっこいいことを言うのであれば、映像だけだと芝居が偏るんです。映像の芝居になってしまう。逆に、舞台だけだと舞台の芝居になってしまう。なので、映像も舞台もやる。偏らせたくないと思って、3年に1回くらいのペースで舞台もやらせてもらっていました。
――ここまでお話を聞いてきて、松岡さんがミタゾノの舞台版を作るにあたって、一番気にかけているのは、テレビのファンの方がどう思われるのかなというところなのかなとも感じたのですが。
松岡:そうですね、ミタゾノというキャラクターがあるので。例えば、テレビで見ていた「ドリフ大爆笑」と生で観るドリフのコントはおそらく違うものだったと思います。同じように違うものではあると思いますし、それを全部受け入れてもらおうとは思わないけれど、「ドラマの方が良かったよね」と言われるのは避けたい。出演させてもらう側としては、せっかくだったら「舞台も面白いね」にしなくてはいけないと思っています。来てくださった方に、「やっぱりドラマでいいわ」と思われたくないという気持ちで臨んでいます。
(取材・文:嶋田真己 写真:高野広美)
舞台『家政夫のミタゾノ THE STAGE レ・ミゼラ風呂』は、東京・EXシアター六本木にて5月16日~6月8日、大阪・森ノ宮ピロティホールにて6月13~17日、石川・七尾市文化ホールにて6月21・22日、愛知・東海市芸術劇場 大ホールにて6月28・29日、広島・上野学園ホールにて7月5・6日、宮城・名取市文化会館 大ホールにて7月12・13日上演。