小栗旬、「彼らのモチベーションと志をちゃんと間違えずに伝えたい」 コロナ集団感染下の奮闘描く主演作に真摯な思い
映画『フロントライン』場面写真 (C)2025「フロントライン」製作委員会
――結城にとって、盟友ともいえる存在の仙道を窪塚さんが演じられました。
小栗:増本さんとお話している中で、「自分が結城をやるなら、船に乗っている仙道は窪塚洋介君しかイメージできない」とお伝えしたんです。「あたってもらっていい?」ということだったので、「これを読んでみて」と台本を送りました。するとすぐに「読んだよ。これは自分的にもやるべき作品なんじゃないかなと思っている」とメールをいただいて。その後、増本さんとお話する中で、信じられないくらい増本さんの熱量が高いので、取材してきたことや思いを聞き、「この人はここまで責任を持とうとしているんだ」と感じたのかもしれません。
窪塚洋介という人はやっぱり自分としてはずっと憧れてきている人なので、彼と一緒に仕事ができるというのは自分にも胸アツな環境でした。
映画『フロントライン』場面写真 (C)2025「フロントライン」製作委員会
――結城からの電話に激昂する仙道のシーンも印象的でした。
小栗:僕と松坂くんがいる対策本部のシーンは一気に先に撮っていたので、変な言い方をすると、「洋ちゃん羨ましいな、俺の芝居を聞けて」と(笑)。こちらは助監督や監督が表現する仙道しか受け取っていないので、いろんなことを想像しながら演じました。でも自分には洋介くんはきっとこういう仙道で来るんじゃないかというのがあったんですよね。実際どのくらい怒っているのかな?と思ったら、想像よりもだいぶ怒っていました(笑)。
映画『フロントライン』場面写真 (C)2025「フロントライン」製作委員会
――対策本部で結城と共に対策を練る厚労省の立松は松坂桃李さん。小栗さんと松坂さんは初共演と聞き驚きました。
小栗:彼もものすごくいろんなものを経験してきていると思うので、一緒に現場にいる時も勝手に信頼感みたいなものがものすごくありました。それは本当に結城が立松を信頼していくのと同じように松坂くんを信頼していけるという感じでしたね。増本さんが「立松ってすごく難しくて、言いにくいセリフもあったと思うけど、それをすごくリアルに言葉にしてくれる人だ」と言っていたのですが、それをすごく感じました。僕と松坂くんのシーンを詰めてバーッと一気に撮らせてもらえたのは、大変だとも思ったのですが、自分たちも同じような環境で追い詰められていくようなスケジュールだったのでよかったのかもしれません。
映画『フロントライン』場面写真 (C)2025「フロントライン」製作委員会
――池松壮亮さんが演じられる真田の人柄や思いにも胸が熱くなりました。
小栗:この作品を観終わって、真田先生が一番いい役だったなって(笑)。この表現が正しいのかわからないけど、いつ観ても彼は上手いですよね。セリフがちゃんと自分の言葉として出てきている感じがするのですごいなと思います。劇中では、僕が船に行った瞬間しかお会いできてないので、一緒にがっつり芝居したという感じではないんですけど、滝藤(賢一)さんと池松くん2人のシーンは「チキショー!羨ましい!」って思いながら観ていました(笑)。
――改めて本作を通じて、ここを感じてほしいというポイントはどこでしょう。
小栗:ひとつはみんな体験していて、誰しもがあの時の自分を思い返せるというのがすごく重要だなというのがあるんですけど、あの時って僕も報道を見て知った気になって、日本の対応は悪いんじゃないかとどこかでこの人たちのことを悪者にしている自分がいたんですよね。取材してきた資料を見たら、「あの時、中はこんなふうになっていたんだ」と思ったし、実際立ち向かった皆さんにお会いした時に、口をそろえて「1人でも多くの人を助けるのが自分たちの仕事だった」とお話されていたので、そこに嘘はないんだと僕は思っています。そこは感じてもらえるといいなと思うし、情報社会の中で自分たちが受け取っていることを疑うというのは重要なことなんだなと感じてもらえる作品になっているので、そういうところを受け取ってもらえるといいなと思います。