小林薫73歳、今なお「アップデートしたい」 ゴールなき俳優業を突き詰める熱意を語る
世間から「史上最悪の殺人教師」と呼ばれ、厳しい目で見られる薮下に対して、律子側には550人もの大弁護団が結成される。まさに極限状態に追い込まれる薮下にとって、唯一弁護を引き受けてくれるのが湯上谷だ。
小林は「台本には、湯上谷は“町弁”だと書いてあって。つまりエリート弁護士ということではなく、その町に生きているという、リアリティや生活感がきちんとある人なんだと思いました」とキャラクターについて分析。「湯上谷が、『弁護士を探すの、大変だったでしょう』と薮下に語りかけるセリフがあります。それくらい、薮下の弁護を引き受ける人はいなかったということ。マスコミの報道によって彼を追い詰めるような世論が形成され、みんながそちらに流されていくと、それを覆すのは大変なことですから。そんな薮下に、湯上谷は『お引き受けしようと思っていますよ』と言えるような人なんですが、ただの“良い人”というわけでもないですよね。生活感や肌感を持って生きている湯上谷からすると、これはリアリティを感じない、おかしな事件だと気づく。だからこそ弁護士として引き受けなければいけないという、正義感を持っている人だと思いました」。
綾野とは「これまでに、熊切和嘉監督の映画『夏の終り』と『武曲 MUKOKU』、ドラマ『ハゲタカ』(テレビ朝日系)とご一緒させていただいて」と共演を重ねている。連続テレビ小説『カーネーション』(NHK総合ほか)では共演シーンこそなかったものの、小林がヒロインの父、綾野がヒロインの恋人を演じたこともあり、小林は「綾野くんとは、縁があるなと感じています」とにっこり。
映画『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』場面写真(C)2007 福田ますみ/新潮社 (C)2025「でっちあげ」製作委員会
「今回は久しぶりの共演になりましたが、綾野くんも大人になったなと思いました。若々しい青年といったイメージだったからね。40歳を超える年齢になって、キャリアを積み重ねていく中での変ぼうもあるし、彼自身もいろいろと考えることもあると思います。綾野くんは、自分でも説明できないような状態について、一つひとつ言葉を紡ぎ出しながら、ものすごく丁寧に薮下を演じていました。僕はそれを“受け止める”ということを大切にしていました」と真摯(しんし)な姿を目にしていたという。