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小林薫73歳、今なお「アップデートしたい」 ゴールなき俳優業を突き詰める熱意を語る

映画

■「役者業にはゴールがない」70代を迎えても“アップデート”したい

 綾野が「共演者との芝居の総当たり戦」と表現した本作。その中で、薮下を訴える律子にふんした柴咲は、恐ろしいほど不気味なオーラを放っている。

映画『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』場面写真(C)2007 福田ますみ/新潮社 (C)2025「でっちあげ」製作委員会
 「柴咲さんとは、大河ドラマ『おんな城主 直虎』(NHK総合ほか)で1年間ほど一緒に仕事をしていたこともあります」と回顧した小林は、「その当時から一層、奥行きや幅が出てきたなと思いながら見ていました。役者として、観客から憎まれないような役しかやらないという生き方もあるはず。律子は『よくぞ、引き受けた』と思うような役ですから、こういう役もできるんだな、すごいなと思いました」と感心しきり。「僕も非道な役、悪人と言われるような役を演じることもありますが、役者は自分の役を愛しますから。誰もがこれはとんでもない人だと思っても、役をもらった当人は、自分だけはこの人を愛してあげようと思って演じるものです。それは、役者の本能のようなものかもしれません。柴咲さんがその役に寄り添っているからこそ、律子は堂々たるたたずまいをしているし、『真実を捻じ曲げているのはあなたたちだ』という目をしている」。

 70代に突入し、役者として50年以上のキャリアを持つ小林。あらゆる作品で唯一無二の存在感を発揮し、精力的な活動を続けている。「歳を取ると深みが増すなんて言うけれど、そんなことないと思いますよ。歳を取ったら、間違えることも多くなりますから」と笑いながら、「歳を取ったからといって、大したことをやっているわけではないと思います。“時分の花”という言葉があるように、若い時にはその時にしかできない芝居もあるし、若い時の方がいい芝居をすることもある」と役者業について持論を展開。

 続けて「若い頃は、表現することこそが、演技だと思っていました。“表現すること”がスタートだったけれど、現場を重ねていくごとにいろいろな監督さんから『悲しいからって、悲しい顔をしてはダメだ』と言われたり、なるべく表現しないことの大切さを教えられたりもして。人間というのは、“周りの人からはそんなふうには見えない”ということの中に悲しみがあったりする。そうやって、演技に対しての考え方が変わってくることもあります」と歩んできた道のりに思いを馳(は)せつつ、「役者業には、やっぱりゴールがないからなあ」としみじみ。


 「だからこそ、これからもアップデートしていきたいなと思っています。今回は三池さんの作品に初めて呼んでいただいて、自分のキャリアの中でも新しい空気を入れられた感じがあって。アップデートするチャンスとなる作品に出会えることができているので、僕は恵まれているなと思います」と感謝を込めていた。(取材・文:成田おり枝 写真:高野広美)

 映画『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』は公開中。

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