『ジュラシック・パーク』脚本家デヴィッド・コープが書きたいと思った“誰もが知る名作” ギャレス・エドワーズ監督も納得
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──そうした方が絶対いいです(笑)。ちなみに、そんなスケジュール感でしたがギャレス監督は本作の監督オファーを受けた時、まず真っ先に何を思いましたか?
ギャレス:今回のオファーは、これまでとは違う形で受けたんです。実は最初の電話を受ける前日、僕はガールフレンドと一緒に『ジュラシック・パーク』を流しながら脳内で全く関係のない別のアイデアについて考えていたんです。ただ、比喩的に同じことをやっているシーンが『ジュラシック・パーク』にあって、気がついたら映画の序盤からラストまでメモを取って観ていました。分量的には4〜5ページくらいになっていたんですけど、これは現代のSF要素や文学性を排除して、まるで1000年前の人が物語を伝えるようにして書くんです。僕はこれを大好きな映画でよくやるんです。そうすると、その物語は典型的な神話のようになる。そうやって全てを取り除いたバージョンから、ずっと語られている物語とは何か考える。その核心に迫るためにさらにその文書をファイリングして1年後くらいにそれをもう一度読むんです。その文書が何の映画についてのものだったかはもう覚えていないけど、その“神話バージョン”を読むと、僕が取り組んでいる何かしらのことに対する解決方法やアイデアが生まれてくるんです。
──とても興味深いメソッドですね。
ギャレス:翌日、僕は本作にもエディターとして参加したジャベツ・オルセンと電話していたんだけど、その最中に携帯がブーッて震えて。何かと思って画面を見ると、そこには「ユニバーサルが『ジュラシック』の新作の監督を探している!」というニュース記事の見出しが表示されていたわけです。だから僕は何事もないふりをして話し続けながら、自分のエージェントにただ「Is this stupid?(バカな考えかな?)」とだけ書いて記事のURLと一緒にショートメールを送ったんです。その後もジャベツと会話を続けていたけど、電話が終わった頃にはエージェントから4件も不在連絡が入っていて。
映画『ジュラシック・ワールド/復活の大地』場面写真 (C)2025 Universal Studios. All Rights Reserved.
何が起きていたかというと、本作のプロデューサーであるフランク・マーシャルとユニバーサルが「『ジュラシック』の新作の監督、興味ありますかね?」って僕のエージェントに電話をかけていたんです。エージェントは「さあね、ギャレスはスティーヴンのこと大好きだけど、他に自分のことやりたそうだし」って返事をしている最中だったんだ。そこに僕から例のショートメールが届いたものだから、彼はその場で爆笑しちゃって。ユニバーサルも「何事?」ってびっくりして、エージェントがその場で僕の連絡の内容を白状したんだよ。まだ疑問符をつけていたのに!(笑)
──映画みたいな出来事ですね(笑)。偶然『ジュラシック・パーク』を観返していた、という縁もありますが、本作はかなりそのシリーズ第1作目を想起させる作風が印象的です。作品に込められたオマージュや参考にした部分について聞かせてください。
ギャレス:映画の中には僕も知らないほどのイースターエッグが隠されていると思います(笑)。現場に立って実際にセットを見たり、何か物を手に取ってみたりすると「ああ、それは初期のスピルバーグ作品に由来するものだ」って教えてもらうんです。例えば映画のクライマックスに出てくるガソリンスタンドの雑誌は1作目やスティーヴンへのさりげないオマージュやリファレンス(言及)になっています。映画に登場する雑誌の一つには『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の記念号もあって、本当に細かいところまで凝っています。あと、ギフトショップにはキーホルダーが売っていて、それは『未知との遭遇』のデビルズタワーにちなんだもの。
──ええっ、見逃していました!
ギャレス:序盤に登場するバー(Van Dijk's Bar & Grill)の壁にも様々なものが飾られていて、『ジョーズ』に出てくるアミティ島のナンバープレートや、オルカ号のペダルのレプリカが飾ってあるんです。とにかくあのバーに関しては部屋をもので飾って埋めなきゃいけなかったから、色々なものがあります。映画に携わったみんなが大ファンだったから、観客がおそらく気づかないくらい細かいところにも「ここに何を置こうか」「あそこには何がある」といった遊び心があって、それが彼らの喜びでもあったんです。
映画『ジュラシック・ワールド/復活の大地』場面写真 (C)2025 Universal Studios. All Rights Reserved.
──デヴィッドさんは『ジュラシック・パーク』のみならず『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』でも脚本を担当されていましたが、物語におけるオマージュや参考部分についてはどう考えましたか?
デヴィッド:とても難しく感じました。なぜならその二つの映画に携わったからこそ、本当にキャリアを築けたような物なので、そういう意味でセルフオマージュは避けたかったんです。まるで自画自賛に思えてしまうでしょう? 他の人の作品に敬意を表すのはいいけど、自分の経験したことにそれをするのは少し違うなと思っていました。ただ、結果的に避けられなかったことでもあります。なぜなら、私は私ですし、自分のスタイルも、そういう映画が好きで観たいから書くわけで、同じようなトーンの作品になるのは必然的なんです。
今回の作品も30年前に書いたものと似たトーンで書きましたが、それは意図的ではなく、単に自分の持ち味が限られていて、結局それが好きだからなんですよね。僕は何かを書くときはいつも、映画館に座ってバケツいっぱいのポップコーンを抱えながら、自分が何を観たいのか想像して書いていますから。