『鬼滅の刃』下野紘&松岡禎丞が語る、魂のぶつかり合いと心に刻まれた戦い
関連 :
――善逸と獪岳、ふたりの関係性についてどのように感じましたか?
下野:原作で初めて読んだときは、正直、獪岳に対して「嫌なヤツだな」という印象しかありませんでした。ですが、今回改めてアニメで演じてみて、彼の背景や善逸との関係性を深く掘り下げていくうちに、少しずつ見方が変わっていきました。
善逸は獪岳のことを心の底から憎んでいる。それは当然のことなのですが、それだけではない、どこかで「一緒に違う未来を歩めたのではないか」と思ってしまうような、切なさも感じるようになって。獪岳も獪岳なりに、決して努力をしてこなかったわけではない。けれど、その方向や想いが、ほんの少し違う方向に向いてしまったがゆえにこうなってしまった。
そんなことを考えながら演じていたら、ふと、「なんだかかわいそうなヤツだな」と思いました。善逸との対峙は、そのすべてがぶつかり合う瞬間でもあるので、ぜひ注目して観ていただきたいです。
下野紘
松岡:今回の善逸は、本当に“寝てない”ですよね。それくらいの覚悟をもって、獪岳との戦いに臨んでいる。その姿勢を見たとき、「ああ、善逸は本当に成長したんだな」と、ぐっときました。
正直に言えば、僕は獪岳のことが大嫌いです。でも同時に、追い詰められた人間が辿り着いてしまう場所は、もしかしたら彼のような姿なのかもしれない、とも思ったりしました。
自分は一生懸命やってきたつもりなのに、どうしても越えられない“差”。その苦しみや焦りに吞み込まれて、心が折れてしまったのかなと。
表面上の“強さ”を装っていた彼の中に、実はとても弱い心が隠れていた。そのギャップがあまりにも大きくて、下野さんと同じく、やはり僕も、どこかで“哀れみ”のような感情を抱いてしまいました。
他人をかわいそうだなんて思うのは、おこがましいかもしれません。でも、それでも……やはり獪岳というキャラクターには、哀しみを感じずにはいられませんでした。
松岡禎丞
――冨岡・炭治郎VS猗窩座、しのぶVS童磨も、まさに“宿命”がぶつかり合う戦いでした。そうした死闘を見届けて、どんな想いが胸に残りましたか?
下野:今回の第一章で描かれている三つの戦いは、それぞれが言葉では言い尽くせない重みと意味が込められている。だからこそ、見終えたあとには胸に残る余韻もある。本当に、深くて濃密な戦いばかりだなと感じました。
松岡:本当にそうですね。あとは今回、猗窩座の過去も描かれましたが、彼の苦しみや怒りには、心の底から共感してしまう部分がありました。
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』場面写真(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable