吉高由里子「闘っている分、得している」 蓬莱竜太と語る“現代女性に強いられる闘い”
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――物語には、SNSが重要なツールとして絡んでくるとか。
蓬莱:SNSの登場によって、だいぶ変わりましたよね。僕個人としては非常に厄介なものが生まれたと感じています。情報を拡散する優れた部分もありますし、承認欲求を満たしやすくはなりました。ただ、匿名性もありながら承認欲求を満たせるというところが、現代の穴をついているというか、依存性が生まれてくる。現実の自分とは違う自分も作り出せますし。そういったことで自己実現を果たすことが可能になってくるのは怖いことだし、受け取った側の情報処理の仕方も難しい。
――そうですね。
蓬莱:真実かどうかもわからないまま、真実とされて広がっていくなかで、1人の人格が外から形成されてしまったりする。とても怖いツールだと思いますし、今の時代を見つめるときに描きたくなります。主人公たちは大学時代のフットサルチームの仲間で、輝きを自分たちで作れたと思っていた。けれどSNSによって裏では違う現実が作られていて、主観と客観が当事者にもわからなくなっていく。登場人物たちを苦しめるひとつのツールとして、SNSの要素は盛り込みたいと思いました。
蓬莱竜太
――吉高さん自身は、匿名性と対極の立場でSNSと付き合われていると思います。Xのポストも、すぐニュース記事になります。
吉高:そんな時の人じゃないですよ。むしろSNSって、発信のスタートラインがみんなこんなにも一緒なんだ、と感じます。こういった仕事をしているから何でもニュースになるというわけでもなくて、一般の方の投稿でも急にバズることがある。アンディ・ウォーホルが「人は誰でも15分だけ有名になれる日が、いつの日か来る」と言いましたけど、まさにそういう時代だなと感じますし、一層言葉には気をつけなきゃと思います。
――たしかに、そうですね。
吉高:怖いですよ。あともちろん、私自身、発信する側だけじゃなくて、見る側でもあります。夜中に知らない人のライブ配信を見たり。
蓬莱:へえ。
吉高由里子
吉高:どういう人かも知らない、会うこともないだろう人のライブ配信を、「眠れない私は、今なんでこうして見ているんだろう」と(笑)。すごく変な気持ちになります。夜な夜な見て、ちょっと質問したりして。
蓬莱:夜な夜な!?(笑)
吉高:ライブ配信って、質問できたりするじゃないですか。そうすると返事がきたりして、「あ、答えてくれた」ってちょっとうれしかったり。「なんなんだろう、この気持ち」となる。名前をつけてほしいです。同じ時間を共有している人たちとの感じというか。なんですかね、これ。寒くなってきたからかな。会うこともないし、その人の生活に関わることもないんですけど。
蓬莱:関わりのない人だから話せることっていうのも、あるよね。
吉高:そう、それは絶対あると思います。

