渡辺謙、「このままではダメだ」方向転換した30代 1本の映画との“運命的な出会い”

病いを乗り越え、ブロードウェイミュージカル『王様と私』の千秋楽を無事終えた俳優の渡辺謙が、母国・日本で元気な姿を見せた。しかも、ハリウッド映画最新作『追憶の森』を引っ提げての凱旋だ。オスカー俳優マシュー・マコノヒーとの共演にも大いに刺激を受けたという渡辺が、映画について、演技について、そして自身の人生観について赤裸々に語った。
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本作は、富士・青木ヶ原の樹海を舞台に、妻を亡くし人生に絶望したアメリカ人・アーサー(マコノヒー)と、命を断ち切れなかった謎の日本人・タクミ(渡辺)が生と死を見つめながら、一条の光を導き出す感動のミステリー・ドラマ。『[リミット]』で注目を浴びた名手クリス・スパーリングのオリジナル脚本を、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』などの名匠ガス・ヴァン・サント監督が映画化した。
「大切な人を失っても、それで全てが終わりではない。その人といったいどんな日常を送ってきたか、一度きちんと向き合うことが、実は大切なことではないか」。ここ10年、いろんなことが起こり、見えない力に動かされてきたという渡辺は、本作に込められたメッセージをそう読み取った。「とても日本的なテーマだと思いますが、脚本を読んだ時、“アメリカ人がこんなことを考えるようになったのか”という素直な驚きと、ガス(監督)がやるならこれは面白くなると思った」と出演の経緯を述懐する。
マシューとの共演も渡辺には大きな刺激になったようで、今回は役柄上、顔合わせを一切せずに本番に入るという徹底ぶりを見せた。ところが、「樹海をフラフラしている僕が、マシューに水を飲ませてもらうシーンを撮ったんですが、全く使えませんでした。2人とも感情が高ぶり過ぎて、監督から“もっと抑えて!”と言われてしまって。本当に恥ずかしいくらい酷くて。結局、数テイク撮りましたね」と苦笑い。