クランクイン!

  • クラインイン!トレンド

『バルバラ』ジャンヌ・バリバール、自らの演技で亡霊を引き寄せる?

映画

 この映画は、バルバラの人生を描いた作品ではない。映画の中でバルバラの伝記映画を撮る監督と、バルバラを演じる女優の姿を描く“入れ子構造”を成している。「私が演じたブリジットは、私とマチューが一番やりたくない映画の中でバルバラを演じている女優。だから、この役にトライする際、私は一度たりともバルバラに近づこうなんて意識はなかった。ピアノの弾き語りの練習をするときも、自分自身を“核”に置きながら、ブリジットと同じ状況に身を置くことだけを心がけた」というジャンヌ。

 ところがこの映画は、ブリジット、ブリジットが演じるバルバラ、そしてそのブリジットを演じるジャンヌが複雑に交錯し、あいまいな境界線の中で観る者を迷子にする。「この映画のバルバラは、1つの“亡霊”と言えないかしら、とマチューと話をしたの。それだけでなく、私やマチューの青春時代の亡霊でもあるんじゃないかと…私とマチューは撮影現場に毎日行くけれど、どの瞬間に亡霊がやってくるか分からない。知らないうちに降りてきて、それを観る方がどう感じ、どう判断するか。それがこの映画の面白いところでもあるわね」と笑顔を浮かべる。

 翻弄されることで浮かび上がる、バルバラの真の姿…。これはもう説明のしようがなく、映像を観ていただくしか手立てがないが、本作でバルバラのことをさらに深く知ったジャンヌは、「彼女を理想化しすぎていた」部分も発見したと振り返る。「今までバルバラに対して“模範的な女性”という思いを抱いていましたが、撮影後は、逆に反面教師の存在になった。彼女は観客に自分が持っている全ての愛を差し出すけれど、その代償として、“孤独”に耐えながら生きなければならなかった。私にはそれはできない。尊敬する気持ちは変わらないけれど、孤独の中で生きることだけはしたくない」と複雑な思いをかみしめていた。(取材・文・写真:坂田正樹)

 映画『バルバラ~セーヌの黒いバラ~』は、11月16日より全国公開。

2ページ(全2ページ中)

この記事の写真を見る

関連情報

関連記事

あわせて読みたい


最新ニュース

  • [ADVERTISEMENT]

    Hulu | Disney+ セットプラン
  • [ADVERTISEMENT]

トップへ戻る