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ソ連偽りの繁栄を暴く『赤い闇』 A・ホランド監督に聞く、情報洪水社会を生き抜くヒント

映画

 世界恐慌下の1930年代、隠蔽されたソ連の悲惨な“実態”を暴き出した英国人記者の壮絶な闘いを描く映画『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』。本作でメガホンを取ったアグニェシュカ・ホランド監督は、「これは決して過去のことではない、現代も同じような状況に近づいている」と警鐘を鳴らす。政府とメディアの癒着、氾濫するフェイクニュース、そしてコロナ禍でも繰り広げられた大国同士のプロパガンダ合戦など…1930年代同様、真実が見えない時代の中で、われわれは何を信じて生きていけばいいのか? ホランド監督にジャーナリズムのあるべき姿を聞いた。

【写真】主人公がウクライナで見た真実とは… 『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』場面写真

 本作は、米アカデミー賞外国語映画賞ノミネートの経験を持つ『太陽と月に背いて』『ソハの地下水道』の名匠ホランド監督が、実話をベースに映画化した衝撃ドラマ。1933年、世界が不況にあえぐ中、スターリン統治下の独裁国家・ソ連だけがなぜ、“理想郷”と呼ばれるほど繁栄しているのか。その謎を解き明かすため、単身モスクワを訪れた英国人記者ガレス・ジョーンズ(ジェームズ・ノートン)は、当局の目をかいくぐり、すべての答えが隠されているウクライナの地に足を踏み入れる。だがそこで目にしたものは、大飢饉(ききん)という想像を絶する光景だった…。

■大切なのは、外側の史実ではなく内なる“真実”

 脚本を読み終えた瞬間、「この物語は、映画として絶対につづらなければならないと確信した」と語るホランド監督。「なぜなら、私たちが今生きている世界が、徐々にあの時代に近づいていると感じていたから。いつの間にか許されてしまった共産主義の犯罪を再び起こさないためにも、もう一度、徹底的に分析する必要があると思ったの」と言葉をかみしめる。「さらに興味深かったのは、なぜこの世には、自分の人生を犠牲にしてまで真実や正義のために戦うことができる人がいるのか、ということ。彼らと私たちは何が違うのか…それが最大のミステリーだった」と吐露。かねてから自身のアイデンティティーという実存的な問いにこだわり続けてきたホランド監督らしい疑問だ。

 だが、こうした実話をベースにした重いテーマを選びながらも、ホランド監督は事実を事実として正確に描くドキュメンタリー的な手法を好まない。その陰影豊かなヴィジュアルとサスペンスフルな語り口は、むしろ映画ファンの心を鷲づかみにする極上のエンタテインメントへと昇華されている。「私はトゥルー・ストーリーの“罠”をよくわかっているの。今、欧米などでは、実話を描いた作品がリスペクトされ、想像するよりも真実をそのまま伝える方が“価値”があると思われている。それはとても残念なこと」と嘆く。

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 「なぜなら、映画というものは、そもそもイマジネーションから始まり、感覚的、視覚的な旅であるべきだと思うから。今回のように実在の人物が登場する場合、私は最初から“フィクション“として作ることを心がける。つまり、外側にある説明的な要素よりも、内なる“真実”にアプローチすることがより重要だと思うから」と持論を展開する。それは自身の師であるアンジェイ・ワイダ監督から学んだ哲学でもある。「私は、観客と真剣に向き合い、それが難しい対話であっても、怠けず、恐れず、コミュニケーションを取ることを彼から学んだ。史実をただ語るのではなく、そこに隠された“核心”を観客にしっかりと届けること、それがフィルムメーカーとして必要なことだと私は確信している」。

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