ソ連偽りの繁栄を暴く『赤い闇』 A・ホランド監督に聞く、情報洪水社会を生き抜くヒント
■今こそ信念を持った“ファクトチェッカー”が必要
スターリンによる独裁国家・ソ連は、情報操作によって大飢饉という実態を、真逆の“繁栄”として世界に伝えた。ニュースという醸成物の恐ろしさを改めて考えさせられる史実だが、ふと見渡せば、政府とメディアの癒着、氾濫するフェイクニュース、さらには大国同士のプロパガンダ合戦など、「いったい何が真実で、何が虚偽なのか」という点では現代にも直結する問題だ。これに対してホランド監督は、「今のメディアはとても憂える状態。そのメディアをポピュリズムの政権がうまく利用して、ますます腐敗は進んでいる」と肩を落とす。「スターリンやヒトラーの時代はラジオや紙媒体を巧みに使っていたが、今はSNSなどであっという間に拡散されてしまう…」とまさにお手上げの状態。
こうした危機的状況を改善するためには、どのような努力が必要なのか。「政治やイデオロギー、金銭的な誘惑に追従せず、確固たる信念と客観性を持って事実を調査・報告ができる力を持ったジャーナリスト、つまり強力な“ファクトチェッカー”が必要不可欠。ジョーンズがまさにその典型ですが、彼のようなジャーナリストがどんどん消えていっている今日、そういった真のプロが勇気を持って仕事ができるよう、私たちが支援し、保護しなければならない。それができなければ民主主義は生き残れない。腐敗したメディア、日和見的な政治家、そして無関心な社会、この3つが揃うと、また恐ろしい歴史が繰り返される」と警鐘を鳴らした。
(C)FILM PRODUKCJA - PARKHURST - KINOROB - JONES BOY FILM - KRAKOW FESTIVAL OFFICE - STUDIO PRODUKCYJNE ORKA - KINO SWIAT - SILESIA FILM INSTITUTE IN KATOWICE
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現在、フランス在住のホランド監督(ワルシャワ生まれのポーランド人)。コロナ関連の情報が錯綜する中、フランスのメディアはどう対応していたのかを聞いてみると、「この国のメディアは他国に比べて自分たちを律する鍛錬ができている。感情的に抑制されており、たやすく操られることはない」と称賛。だからこそ、国のリーダーがいかに責任能力に欠いていたかをメディアによって容赦なく露呈されてしまったわけだが、「面白いと思ったのが、人々を上手にまとめ、コロナと戦えている国は、不思議と女性リーダーが多いこと。私たちに今必要なのは、兵士ではない、ということかしら…」と笑顔を見せていた。(取材・文:坂田正樹)
映画『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』は8月14日より全国順次公開。
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