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岩井俊二監督、「ラストレター」を日本・中国両方で映画化した理由

映画

岩井俊二監督
岩井俊二監督(C)Munehiro Saito

 日本国内にとどまらず海外でもファンの多い岩井俊二。映画監督にとどまらず、その活動範囲は幅広いが、岩井監督が執筆した小説「ラストレター」は、自身がメガホンを取り、日本版を『ラストレター』、中国版を『チィファの手紙』というタイトルでそれぞれ映画化された。近年、日本で製作した映画を海外で配給することはそれほど珍しくないが、その国に合わせて新たに撮影するというのはなかなかレアケースだ。そこにはどんな意図があったのだろうか――。

【写真】岩井俊二監督が中国で製作した映画『チィファの手紙』

■日本・中国両方で映画化した理由

『チィファの手紙』より (C)2018 BEIJING J.Q. SPRING PICTURES COMPANY LIMITED WE PICTURES LIMITED ROCKWELL EYES INC. ZHEJIANG DONGYANG XIAOYUZHOU MOVIE & MEDIA CO., LTD ALL Rights reserved.
 今年1月、日本で公開され大きな話題となった映画『ラストレター』の中国版とも言える『チィファの手紙』。亡くなった姉の死を知らせるために同窓会に参加した妹のチィファは、姉に間違えられた上に、その場で初恋の相手である先輩チャンと再会する。チャンが姉に恋していたことを知っていたチィファは姉のふりをして文通を始めるという物語。基本的なストーリーラインや登場人物の関係性は『ラストレター』と同じだ。

 スクリーンクオーター制などの問題もあるが、アジアでも人気の高い岩井監督だけに、『ラストレター』を中国で上映するという方法も選択肢にあっただろうが、岩井監督は中国で新たな映画として撮影することを選択する。「自分の一番主要な仕事は、物語を作ることであり、できた物語をできるだけ多くの人に見てもらいたいという思いがあります。撮影を自分でやれば、その可能性も広がると思ったから」とシンプルに理由を説明する。

『チィファの手紙』より (C)2018 BEIJING J.Q. SPRING PICTURES COMPANY LIMITED WE PICTURES LIMITED ROCKWELL EYES INC. ZHEJIANG DONGYANG XIAOYUZHOU MOVIE & MEDIA CO., LTD ALL Rights reserved.
 もう一つ、海外で仕事をするということは岩井監督自身の大きな目標でもあった。「20代後半から、日本だけではなく海外で仕事をしたいという思いを持っていました。もちろん映画監督になりたいという夢もあったのですが、それ以上に海外で仕事をしたかったんです。実際映画監督という仕事に就くことができ、中国や韓国にもファンだと言ってくれる方がいた。そこに対する恩返しという意味も大きかった。いろいろな必然が重なって実現したと思います」。

■作品に“出合えなくなる”ことへの危機感

『チィファの手紙』より (C)2018 BEIJING J.Q. SPRING PICTURES COMPANY LIMITED WE PICTURES LIMITED ROCKWELL EYES INC. ZHEJIANG DONGYANG XIAOYUZHOU MOVIE & MEDIA CO., LTD ALL Rights reserved.
 一方で、現在のインターネットの普及ということへの危惧も感じているという。前述したように、世界にネットワークを持つ配信会社が増え、作った映画は世界各国の人が観ることができるようになった。クリエイターと世界がより近くなったように感じられるが、岩井監督は「逆にどんどんローカライズして、海外ユーザーとの距離は遠くなっていくと思うんです」と述べる。

 その理由を問うと「AIなど技術革新により、ユーザーが何を欲しがるか自動的に提示してくれるようになる。それぞれの個人の端末ごとに趣味嗜好(しこう)を認識して、レコメンドする。無限にローカルが存在することにより、標準的なものは誰の目にも触れなくなってしまう危険性がある」と警鐘を鳴らす。

 確かに、スマートフォンなどを見れば、自身がタップしたもの、検索したものに関連する記事や商品が表示され、興味があるものの情報が自動的に収集される。それに慣れてしまえば、モノや作品に出合う機会は失われてしまう。「こうした状況はどんどん加速していくと思います。僕らが次に抱える課題だと思います」と岩井監督は断言する。

 その意味で、さまざまな国の文化や風習などに触れてしっかりと“ローカライズ”することが大切だと語る。「あまり大そうな話ではないのですが、僕はもともと探求することが好きなんです。作る側として、いろいろな国の価値観を知っている方が、より視野は広くなる。撮影現場もそうですが、脚本の書き方、小説の書き方、映像の撮り方、配信の方法も…勉強したいことはたくさんあります」。

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