ソフィア・コッポラ、型破りな父親像は「父フランシスの世代を参考」――『オン・ザ・ロック』インタビュー
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■「女の子の視点から描いた映画を自分で作りたい」
長編デビュー作の『ヴァージン・スーサイズ』(1999)に始まり、自身の東京滞在体験を反映させた『ロスト・イン・トランスレーション』(2003)、孤独なアントワネット像を描いた『マリー・アントワネット』(2006)など、これまで独自の視点で女性たちの内面を描いてきたソフィア。幼い頃から偉大な監督である父のセットで育ち、子役として経験を積んできた彼女が、メガホンを握り自分なりの視点で物語を紡ぐきっかけは何だったのだろう。
ソフィア・コッポラ監督(C)2020 SCIC Intl Photo Courtesy of Apple
「小さい頃から男性的な雰囲気の映画界で育って、男性的な映画も好きな一方で、繊細な映画にも興味があった。でもなかなか自分が観たいと思うような、女の子の視点から描いた作品が少なくて、そういう映画を自分で作りたいと思うようになったのがきっかけね。だから『オン・ザ・ロック』も、ローラの視点から物事を映したいと思った。でもその一方で、ローラと夫ディーンによる見方の違いも意識していたわ。お互い愛していても、考え方や表現が異なるとか。そこから誤解が生まれるのを、往年のスクリューボール・コメディのようにセリフの応酬とテンポの良いリズムでまとめて、リラックスしながら楽しめるような作品を目指したつもり」。
■初めてニューヨークを舞台にした最新作
本作はまた、ソフィアが現在住むニューヨークの街をカメラに収めた初めての作品だ。これまでニューヨークを撮ることがなかったのは、「ニューヨークを舞台にした素晴らしい作品はたくさんあるし、自分なりの特徴をもたらすにはどうしたらいいだろうと考えていたから」とか。この物語では、フェリックスが案内する映画界ゆかりの有名な「21 Club」や、シックな人気レストラン「Raoul’s」が登場。ニューヨークのヴィヴィッドな息吹を感じるなかで、それとなく観光も楽しめるのが乙だ。
ニューヨークロケの様子(C)2020 SCIC Intl Photo Courtesy of Apple
「今はパンデミックの影響で好きなところに旅行ができなくなっている時代だから、映画で旅ができるのは楽しいだろうと思ったの」。
思わず吹き出しながらも、気づけば身につまされたり、ほろりとさせられることが散りばめられている。いまや円熟の境地に入ったと言ってもいいソフィアの、ハートフルなコメディを堪能したい。(取材・文:佐藤久理子)
映画『オン・ザ・ロック』は公開中。