明石家さんま、大竹しのぶと31年ぶり再タッグ「大竹さんしかできなかった」
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◆作品作りへの熱い思い「悩んだシーンほど良いのができる」
渡辺歩監督、大竹しのぶ、明石家さんま
――渡辺監督からご覧になって、さんまさんのプロデューサーとしての手腕は、いかがでしたか?
渡辺監督:まず、本当にアニメにチャンスをくださったことがうれしかったです。その期待に応えたい一心でした。さんまさんは、さりげないふりをされているんですけど、すごく貪欲に面白いものを追求しようとしているんです。常に動いて、いろんな事を反芻(はんすう)されていて。「いいものを作ろう、面白いものを作ろう」という熱量の高さを見て、プロデューサーとしても素晴らしい方なんだなと思いました。
さんま:いやいや(笑)。悩んだシーンほど、良いのができあがるというか。「このまま行ってもいいけど、ちょっと悩もか」、「もういっちょ待てよ」という感じは、ありますね。それは舞台でも同じです。
――先ほど、31年前に2本短編アニメを制作されたお話もありましたが、今回アニメ制作に携わってみて、技術の進化なり感じたことはありますか。
さんま:アニメの進化、監督の手腕、スタッフのすごさ、「こんなにやってくれるのか」とすごく思いましたね。僕がちょっと言うたことでも、監督は理解してくれて、自分の思っている以上のものに仕上げてくれる。例えば、最初に「漁港の肉子ちゃんっ」とタイトルバックを叫ぶんですけど、(稲垣)来泉ちゃん、Cocomiちゃん、僕と3つ録っているんです。どの声をどのボリュームで差し込むのか、監督はいろいろ悩んだみたいですけど。監督に、僕がやりたいことが伝わる感性を持っていただいたことが非常に助かりました。
◆描かれるのは「出会った人を必死で愛すること」
(C)2021「漁港の肉子ちゃん」製作委員会
――今回、新しい挑戦をしたことで、さんまさんご自身について新たな発見や気付きはありましたか?
さんま:アニメというのがすこしでもわかったのが、本当に新しい発見でした。またやらせてもらえる機会があるなら、もう一歩アニメ界に踏み込めるかなというのはあります。今回は精いっぱいがんばってやっただけですけど、今後は自分が思い浮かんだことを形にしていきたいですね。
――本作はアニメ界のカンヌとも呼ばれる「アヌシー国際アニメーション映画祭2021」にも正式招待されました。国内外で『肉子ちゃん』が広まっていくことについて、どう感じていますか。
さんま:そこまで本当に考えていなかったんですけど、もし現地に行ける機会があればいいなあと。(元サッカー選手のジネディーヌ・)ジダンにも会いたいんで(笑)。
――どんな方に観て楽しんでほしいですか。
大竹:やっぱり家族というか、親子で観てもらいたいかなあ。実の親子の間でも、きちんと言葉を交わせなかったり、愛情を持てない関係が今ある中で、血のつながりもないけれども、出会った人を必死で愛することが大切だと描かれている。人とのつながりが希薄になっている、今の時期に観てほしいなと、とても思いますね。
さんま:大竹さん、ええこと言うでしょ?
大竹:(笑)
さんまの「より、いいものを作る姿勢」は限られたインタビュー時間でも健在で、記者の言葉を受けて笑いを誘ったり、話を二重、三重に広げるなど、巧みな話術に大竹&渡辺監督も巻き込み、その場にいた全員を笑顔に変えた。そんな「お笑いモンスター」が作り出した渾身(こんしん)作が、面白くない、はずがない。(取材・文:赤山恭子)
劇場アニメ映画『漁港の肉子ちゃん』は公開中。