西島秀俊、アカデミー賞は「意外に緊張しなかった」 濱口監督「今まで体験したことのない世界に導いてくれた」
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濱口竜介監督と俳優の西島秀俊が5日、都内で開催された「『ドライブ・マイ・カー』アカデミー賞受賞記念 凱旋記者会見」に、山本晃久プロデューサーとともに登壇。第94回アカデミー賞国際長編映画賞受賞した今の思いを語った。
【写真】凱旋記者会見で喜びを語る濱口竜介監督、西島秀俊
本作は、妻を失った男の喪失と希望をつづった村上春樹の同名短編小説を原作に、同作に惚れ込んだ濱口監督が自ら脚本も手掛けて映画化。第74回カンヌ国際映画祭で脚本賞を含む4冠を達成したほか、ゴールデン・グローブ賞非英語映画賞を受賞するなど、世界中の映画賞を席巻。日本映画がアカデミー賞の国際長編映画賞に候補入りするのは、2019年第91回での是枝裕和監督の『万引き家族』以来で、受賞したのは2009年第81回での滝田洋二郎監督の『おくりびと』(旧称:外国語映画賞)の受賞以来、13年ぶりの快挙となった。
本作が世界中で評価された理由を聞かれると、濱口監督は「分からないけど、確かに言えることは村上春樹さんの物語を形成したからこそ」と言い、また「村上春樹さんの世界観を、俳優の方たちが説得力のある形で画面に定着させてくれたことが一番大きい。どの国でも『役者たちが素晴らしい』と言われた」と役者陣に感謝。西島は「登場人物が愛する人を突然失くしても生きていく物語ですが、今世界中で生きている誰もがどこか傷付いていたり、喪失感を抱えて生きているのかなと思っていて。そこからどうやって生きて再生していくのか、何か一つの希望の道筋が描かれていて共感を呼んだのかなと思ってます」としみじみ。
濱口監督はアカデミー賞のオスカー像を持った時の心境を聞かれ、「直前までオスカーが自分の人生に関係してくると思っていなかったので、どう振る舞ったらいいかわからなかった」と当時の心境を明かし、アカデミー賞について「これがどういう意味を持つのか、今目の前にこんなにカメラがある状況を見て、こういうことなんだと感じていて。今まで体験したことのない世界に自分を導いてくれるものだなと思います」と感慨深い様子でコメント。また、今後目指したいことについては、「どこかを目指してやっているとうよりも、映画作りはよくわからないままやっているというのが正直なところ。毎回、手探りなんです。前はこうだったけど、次はもっとうまくできるかもしれないなということを、一歩一歩やっていきたい。前よりちょっといい映画を作れるようになりたい」と語った。
西島はアカデミー賞の会場に立った時の思いを質問され、「あの場に行くまでは緊張するかと思っていたのですが、実際に行ってみると意外に緊張しなくて。あそこは映画愛の強い人たちが集まり、お互いを讃え合う場で、非常に居心地がよかったです」と回顧。また、「今回の僕の演技はかなり説明を排除した演技で、観客の皆さんと共同作業で作り上げる演技だと思っていて。この作品に入る前に、僕は自分の信じる演技をやるしかないと思いました」と言い、「日本には僕よりはるかに素晴らしい才能のある若い俳優さんたちがたくさんいて。そのみなさんが自分の信じる演技を突き詰めたら、僕なんかでも(アカデミー賞に)いけたので、みんないける可能性がたくさんあると思いますし、楽しみです」と後輩の役者仲間の躍進に期待を寄せていた。
映画『ドライブ・マイ・カー』は全国ロングラン公開中。